温暖化でシュヴァルツヴァルトが消える?!
発表日:2025.04.09
東北大学農学研究科の深澤准教授が率いる国際共同研究グループは、温暖化がドイツトウヒの分布に与える影響を解明した。──ドイツトウヒはユーラシア大陸西部の森林に広く分布する針葉樹であり、ドイツ南西部のシュヴァルツヴァルト(黒い森)を構成する樹種の一つである。南欧・中欧では木材としての需要が高く、産業的にも重要な樹種である。しかし、近年、温暖化がドイツトウヒの分布域の北上を阻み、南欧の分布域の縮小を促進しているとの指摘がなされている。そうした懸念を踏まえ、深澤准教授らノルウェー、ポーランド、チェコ、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャの6カ国の森林を調査し、ドイツトウヒの種子が芽生え、成長するのに適した「倒木の腐朽タイプ」の把握に取り組んだ。その結果、ドイツトウヒの実生が定着するのに適しているのは白色腐朽した倒木が多く見られる地域で、その分布は中欧に偏在していることが判明した。また、降水量の季節変化が倒木の腐朽タイプの地理的分布に影響していることを明らかになった。また、これらの知見より、温暖化が進むとドイツトウヒの北欧における分布域が北上することは可能となるが、そこには実生定着に適した白色腐朽した倒木が少ないため、総じて、分布の北上は鈍化すると考えられた。一方、南欧の分布域は温暖化により縮小すると予想されるため、結果としてドイツトウヒの分布域は全体として縮小する可能性があると指摘している(掲載誌:Journal of Biogeography)。