黒潮続流由来の海洋熱波がドカ雪(帯広:120cm/12時間)の真因
発表日:2025.07.07
立正大学、防災科学技術研究所、北海道大学の研究グループは、2025年2月3日から4日にかけて北海道帯広市で観測された記録的な短時間降雪(いわゆる「ドカ雪」)の発生メカニズムを解明した。帯広では12時間降雪量として国内観測史上一位となる120 cmを記録しており、交通障害や建物被害が発生した。――本研究では、海洋と大気の相互作用に着目し、黒潮起源の暖水を伴う海の渦が十勝沖に海洋熱波をもたらし、これが温帯低気圧や前線などの気象条件と複合的に作用した結果、局地的な豪雪が発生したことを明らかにした。
海洋熱波とは、海面水温が平年より著しく高い状態が数日以上続く現象であり、海洋生態系や気象に大きな影響を与える。研究グループは、観測データと領域気象モデルを用いた数値シミュレーションを実施し、さらに現実的な海面水温分布を与えた再現シミュレーションと、海洋熱波の影響を除去したシミュレーションを比較することで、海洋熱波が降雪量を約2倍に増加させたことを定量的に示した。――今般のドカ雪においては、帯広の南東に形成された局地的な前線に向かって、温帯低気圧に伴う強い南東風が湿潤で不安定な空気を十勝平野に送り込み、前線付近の上昇流によって雪雲が発達した。この空気の流入経路は、海洋熱波が発生していた海域の上空を通過しており、海面からの熱と水蒸気の供給によって空気が温暖・湿潤化していたことが確認された。
本研究は、黒潮続流の大蛇行に伴う海洋熱波が、豪雪や豪雨などの極端気象現象に影響を与える可能性を初めて指摘したものであり、2023年9月の千葉県豪雨との関連性も示唆されている。研究者らは、今後の地球温暖化に伴う海面水温の上昇が、豪雪災害の発生リスクを高める可能性があるとし、海洋の状態を適切に観測・予測することの重要性を強調している。研究グループの立正大学・平田英隆准教授は、「海洋熱波は豪雨・豪雪などの顕著気象現象の発生要因となる。日頃から防災情報に注意を払い、適切な行動につなげてほしい」と述べている(掲載誌:Scientific Online Letters on the Atmosphere)。