産総研、太陽光パネル廃ガラスからアンチモンを効率抽出
発表日:2025.09.29
産業技術総合研究所のマルチマテリアル研究部門と材料基盤研究部門の研究グループは、中部電力と共同で、太陽光パネルのカバーガラスから希少元素アンチモン(Sb)を抽出する水熱処理プロセスを開発した。
太陽光パネルのカバーガラスには、製造時の透明性向上や気泡防止のために酸化アンチモン(Sb₂O₃)が添加されている。2030年代後半には大量の太陽光パネルが耐用年数を迎えると予測されており、資源循環型社会の構築に向けてアンチモンの分離・回収技術の確立が急務となっている。
本研究では、廃ガラス粉末を水と混合し、密閉容器内で温和な条件下(一般的な圧力容器の標準設計温度以下)で水熱処理を試行し、処理時間に応じてアンチモン抽出率が上昇し、6時間処理後には約86%の抽出率を達成することに成功した。また、XRF分析により抽出率を定量化し、XRD測定により結晶化の進行を確認した。――この抽出メカニズムは、ガラスの結晶化に伴いアンチモンが結晶構造に取り込まれず液相中に残留する現象を利用したものである。温和な条件下での処理が可能であり、工業的な実装性にも優れているという。
今後は、抽出メカニズムのさらなる理解と反応スケールの大型化を進めるとともに、抽出成分からのアンチモン分離・回収技術の開発、結晶化ガラス粉末の有効活用にも取り組む予定である。なお、本成果は、10月30日~31日に開催される中部電力の「テクノフェア2025」で展示される。
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