川崎市、電気推進船で市民連携型の港湾脱炭素施策を推進
発表日:2025.10.04
川崎市港湾局は10月4日、官公庁として全国初となる100%電気推進による海面清掃船(つつじ、みらい)」の完成記念式典を開催した。両船は老朽化した従来のディーゼル船(つばき、第一清港丸)の後継として導入されたもので、駆動方式の電動化により、年間約45トンのCO₂排出削減が見込まれている。
「つつじ」は双胴型で、バッテリー容量417kWh、最大速力7.6ノット、急速充電で約5時間の充電が可能である。前面ローターにより大量の浮遊ごみを収集できる機能を備える。一方「みらい」は単胴型で、バッテリー容量72kWh、最大速力約13ノット、普通充電で約9時間を要する。小型船の特性を活かし、桟橋下や岸壁沿いなど他船が航行困難な区域での清掃に対応する。両船ともリチウムイオン電池を搭載し、電気自動車用のCHAdeMO規格による陸上充電設備を利用する。
川崎港の海面清掃業務は港湾法に基づき、(公社)川崎清港会に委託されており、平日午前・午後に定期的な浮遊ごみ収集が行われている。収集後のごみは、クレーンで陸揚げし、事業系一般廃棄物と産業廃棄物に分別して処分される。高度経済成長期には年間2,546 ㎥の浮遊ごみが発生していたが、近年は市民・企業の分別意識の高まりにより、年間平均約277 ㎥まで減少している。
今回の電気推進船導入は、港湾管理者である川崎市の率先的な脱炭素化施策であり、地域の環境負荷低減と技術的先進性を両立する取り組みといえる。船体カラーは地元高校生がデザインし、船名は市民公募により決定された。行政・市民・教育機関の連携による地域主導型の脱炭素化モデルとして、今後の港湾政策や環境行政における参考事例となる可能性がある。