カギケノリ配偶体の海面養殖向け人工育成条件
発表日:2026.03.10
国際農林水産業研究センター(JIRCAS)らの研究グループは、紅藻カギケノリの生活環に着目し、配偶体を海面養殖用の種苗として安定的に得るための培養条件を整理した(掲載誌:Marine Biotechnology)。
カギケノリはブロモホルムを多く含むことから、反すう家畜の飼料として利用した場合にメタン生成を抑制する。しかし、カギケノリ配偶体を安定供給するための人工育成条件は未確立であった。本研究では、胞子体から配偶体に至る過程に関与する水温・日長条件および育成中の通気条件が体系的に検討され、配偶体生産を計画的に進めるための材料が示されている。
胞子体を 21 日間、複数の温度と明暗周期条件で培養した結果、四分胞子が放出されたのは「水温 25°C」または「短日の明暗周期(明 8 時間:暗 16 時間)」の条件に限られたとされている。 さらに、四分胞子放出までに要する日数を推定した解析では、水温 25°C 条件で約 12.3 日、短日条件で約 15.7 日と推定され、両条件を組み合わせることで、単独条件と比較して放出までの期間が約 2 日短縮される可能性が示された。これらの数値は、配偶体の生産時期を見通すうえでの指標として利用でき、季節変動に依存しない培養工程の構築に寄与する情報となる。
続いて、発芽した幼配偶体を 28 日間培養し、通気条件と静置条件が比較された。14 日目以降に成長速度の差が明確になり、通気条件では生重量がより大きく増加したとされている。 28 日後の形態については、通気条件下で直立茎が伸長し、側枝が多く形成され、海面養殖で扱いやすい形態が得られたとされる。また、ブロモホルム含量は両条件で検出されたものの、通気条件でより高い値が示された。これらの結果は、気流の確保が配偶体の形態形成や化学成分の蓄積に影響を及ぼす可能性を示すが、室内で得られたデータであるため、海面環境での再現性には追加の検証が必要となる。
人工的に誘導した四分胞子から配偶体を育成できた点は、海面養殖に向けた種苗確保の技術基盤となる。今後は、飼料利用を想定した安全性評価やメタン削減効果の確認が課題となり、制度面での整理も必要となる。また、本研究では国内株が対象であることから、フィリピンなど熱帯域の株で同様の条件が適用できるかを検証し、地域固有の環境条件に応じた養殖技術へ展開する取り組みが進められる見通しである。
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