地球温暖化や異常気象による強光ストレスは、植物の成長を妨げ、作物の収穫量を減少させる。こうした懸念が一層深刻化しつつある中、これまではゲノム編集や形質転換技術によって植物の機能を強化する取り組みが進められてきた。しかし、化合物を利用するといった視点からストレス耐性の向上を図る研究・技術開発の事例はあまり報告されていなかった。──東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守准教授らは、植物を守る新しい化合物を探す独自のスクリーニングシステムを開発し、「アントラキノン(3つのベンゼン環が繋がった構造)」という化合物の仲間が「強光ストレス下で植物の光合成能力を高める」ことを発見した。この化合物は、タバコ、レタス、トマトなどの葉にスプレーするだけで成長を促進し、通常の環境下でも悪影響を及ぼさないことも確認されている。過酷な環境でも安定した作物生産が可能となり、世界の食料問題解決に貢献することが期待される(掲載誌:Communications Biology)。