科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は、第12回科学技術予測調査の一環として、今後30年を見据えた科学技術および社会システムに関するデルファイ調査を実施した。本調査は、従来の技術中心の予測に加え、社会的価値観や未来像を重視した構成となっており、ホライズン・スキャニング、ビジョニング、デルファイ調査、シナリオ分析の4段階で構成されている。
調査対象は、2055年までの実現が期待される836件のトピックで、8分野71細目に分類された。専門家によるウェブアンケートを2回実施し、最終的に4,761名の回答を得た。質問項目には、各トピックの重要度、国際優位性、実現時期、実現に向けた課題などが含まれる。
結果として、全体の8割以上のトピックが2035年までに科学技術的に実現可能とされ、社会的実現については2040年までに9割が達成可能と予測された。特にAI・ICT分野は実現時期が早く、宇宙・地球科学分野は遅い傾向が見られた。重要度が高いトピックは、自然災害対策や環境・資源問題に集中しており、社会的実現に向けては「事業化」や「社会受容」が鍵とされた。
また、分野横断的に「社会」や「AI」に関するトピックが増加しており、これらは国際優位性が相対的に低い一方で、倫理や合意形成といった社会的課題への対応が求められている。専門家の7割は、今後30年間の科学技術の進展に対して前向きな見通しを持っており、研究と社会の関係性についても、双方向の対話と共創の必要性が強調された。
本調査は、科学技術政策の基礎資料として、また研究開発目標の策定や社会実装の議論に資する情報として、幅広いステークホルダーに活用されることが想定されている。