経済産業省は「レガシーシステムモダン化委員会総括レポート」を公表し、日本企業が直面するDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の障害とその対処方針を明らかにした。
本レポートは、2024年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」に基づき、経済産業省、デジタル庁、情報処理推進機構(IPA)が事務局を務める「レガシーシステムモダン化委員会」による議論と市場調査の成果をまとめたものである。
レガシーシステムとは、老朽化・複雑化した既存の情報システムを指し、DXの推進において大きな障壁とされている。2018年の「DXレポート」では、これらのシステムが経営改革の足かせとなり、経済損失を招く可能性を「2025年の崖」と表現していた。
今回のレポートでは、ユーザー企業、ベンダー企業、サプライチェーンの各視点から、レガシーシステムがもたらす課題を整理。特に、経営層のIT理解不足、情報システム部門の自律性の欠如、ベンダー依存の構造が問題視されている。また、2024年末から2025年初頭にかけて実施された市場調査では、経営層との情報共有やCxO(Chief x Officer)の設置が、IT資産の可視化や内製化の進展と相関することが明らかとなった。また、サプライチェーンリスクや人材不足も、モダン化の障害として浮き彫りになった。レポートは、ユーザー企業に対してはシステムの可視化・内製化・標準化対応・上流人材の育成を、ベンダー企業には技術開発と伴走支援を求めている。さらに、経営層の強いコミットメントの下でのトップダウン型推進が不可欠であると提言している。
政策面では、企業が自律的にDXの成熟度やIT資産を把握できるよう、可視化ツールやガイドラインの整備を進めるとともに、IT人材の育成とスキル情報の活用を支援するプラットフォームの構築を進める方針である。