フロン回収・処理技術とは、オゾン層破壊の原因となる特定フロンを回収し、破壊等の処理を行う技術の総称である。フロンの用途としては、冷媒(カーエアコン、業務用エアコン、家庭用エアコン、冷蔵庫・冷凍機器)、断熱材(冷蔵庫、建材)などがある。
現在、わが国では、カーエアコンは自動車リサイクル法によって、家庭用の冷蔵庫及びエアコンについては、家電リサイクル法に従って、それぞれフロン類の回収が行われている。また、業務用のエアコン及び冷蔵庫・冷凍機器については、フロン回収・破壊法(特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律)に基づいて回収が行われている。
具体的な技術には、フロンの回収技術と破壊技術に大別される。回収技術は、ガス状のフロンを吸引して圧縮機で圧縮し、圧縮ガスを冷却液化してボンベ(回収容器)に入れる「ガス圧縮方式」等がある。一方、フロン破壊技術としては、ロータリーキルン法、セメントキルン法、プラズマ分解法等があり、「CFC破壊処理ガイドライン」に従って、破壊処理の要件が示されている。下図に示すプラントは、高温の炉内でプラズマを発生させ、フロンと水蒸気を反応させることにより、フロンを分解する事例であり、その分解率は、99.999%以上に達する。
建材の断熱材フロンについては、特別な法律は制定されていないが、環境省では建材用断熱材フロンの処理技術に関する報告書を平成19年にとりまとめるなどして、関係業界の自主的な回収・処理の取り組みを支援している。
フロン分解装置の外観
出典:日本電子(株)「JEOL技術情報:高周波熱プラズマの特徴を生かした用途開発」
http://www.jeol.co.jp/technical/ie/netu-plasma/netu001/tharmal-05.htm
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(1)フロンによるオゾン層の破壊
フロンとは炭化水素の水素を塩素やフッ素で置換した化合物の総称であり、フロンには、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などがある。フロンは化学的、熱的に安定な物質で、工業的には有用な物質であることから、冷媒や断熱材等に広く使用されてきた。また、臭素を含むフロンのことをハロンといい、消火器の消化剤等に使用されていた。
1980年代中頃に、北極や南極上空の成層圏のオゾン濃度が春期に減少しているとの報告が、日本の南極昭和基地や海外の研究者から行われると、状況は一変した。この原因として、人為的に製造・使用されるフロン、ハロンが大気中を拡散してオゾン層に達し、そこで光化学反応を起こすことが指摘されたためである。
塩素を含むタイプのフロンは、紫外線によって分解され、塩素原子を放出する。オゾンは塩素原子と結びつくと、一酸化塩素と酸素分子に分解される(式[1])。一酸化塩素は、酸素原子と結びつくと、塩素と酸素分子になる(式[2])。この反応が繰り返されることで、オゾン層の破壊が進む。なお、ハロンの場合は臭素が分解され、1原子あたりのオゾン層破壊能力は塩素の30~120倍と言われている。
Cl+O3→ClO+O2 …式[1]
ClO+O→Cl+O2 …式[2]
(2)オゾン層破壊対策とモントリオール議定書
オゾン層の濃度が減少した部分は、人工衛星の画像解析によって穴のように見えることからオゾンホールと名付けられた。オゾン層は地球に降り注ぐ紫外線を吸収する働きを持っている。オゾンホールの出現は、地表に達する紫外線の増加によって人や野生生物へ被害をもたらすことから、オゾン層破壊対策が国際的に求められることとなった。
1985年の「オゾン層保護のためのウィーン条約」、1987年の「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」で、国際的な規制が始まった。我が国も1988年に同議定書を批准するとともに、同年に「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」を制定した。その後、現在に至るまで、条約改正に伴う規制強化が実施されており、対応する形で同法の改正も行われている。
図1は、モントリオール議定書に基づき削減が進められている物質と、その規制スケジュールである。先進国と途上国で、対象となる物質の全廃期限が異なっている。
図1 モントリオール議定書に基づくオゾン層破壊物質の生産量及び消費量の規制スケジュール
出典:環境省「モントリオール議定書」
http://www.env.go.jp/earth/ozone/montreal_protocol.html
(3)代替フロンの登場と新たな問題
フロンの代替物質として使用されることとなったHCFC(図1参照)やHFCなどを、代替フロンと呼ぶ。これらはオゾン層を破壊しない(あるいは破壊効果が弱い)が、強い温室効果を持つため、京都議定書の削減対象となっている(詳細は、「代替フロン・ノンフロン」の解説を参照のこと)。
オゾン層を守り、地球温暖化を防止するには、家庭用および業務用の各種冷凍空調機器から、オゾン層破壊や地球温暖化の原因となるフロン(CFC、HCFC、HFC)を適切に回収することが必要である。フロンの用途としては、冷媒(カーエアコン、業務用/家庭用エアコン、食品のショーケース、業務用/家庭用冷蔵・冷凍機器)、断熱材(冷蔵庫、建材)などがあることから、これらの品目それぞれについてフロンの処理・回収の仕組みを定めておく必要がある。
(1)各業界におけるフロン回収・処理システム構築
家電(家庭用エアコン、家庭用冷蔵庫)については、1998年に家電リサイクル法(特定家庭用機器再商品化法)が定められ、エアコン、冷蔵庫の冷媒用フロンを回収・破壊することが定められた。さらに、家電リサイクル法は、後述するフロン・回収破壊法の施行を踏まえて、2002年に改正され、家庭用冷蔵庫の断熱材に使用されるフロンについても、回収・破壊が義務づけられた。
2001年には、フロン回収・破壊法(特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」が制定された。この法律によって、自動車用エアコン、業務用エアコン、業務用冷凍機器の冷媒フロンの回収・破壊が義務づけられた。このうち、自動車用エアコンからのフロン回収については、2002年に制定され2005年1月から施行された自動車リサイクル法(使用済自動車の再資源化に関する法律)に引き継がれている。
一連の法整備を受け、フロンの使用に関係のある各業界団体において、フロンの回収・分解のための取り組みが進められている。その概要は表1の通りである。
対象 | 業界 | フロン回収・処理システム等 |
---|---|---|
カーエアコン | (社)日本自動車工業会 (社)日本自動車部品工業会 (社)日本自動車販売工業連合会 等7団体 | カーエアコン冷媒用CFC12回収・処理システム →自動車リサイクル法 |
業務用冷凍空調機器 | (中)フロン回収推進産業協議会が自治体や各地の協議会を通じて普及啓発の取組や技術指導、行程管理票の販売などを実施。また、(社)日本冷凍空調工業会や(社)日本冷凍空調設備工業連合会が協力。 | 冷媒回収/再生・破壊システム →フロン回収・破壊法 |
家庭用冷蔵庫 ルームエアコン | (社)日本電機工業会 (財)家電製品協会 | 地域フロン回収推進協議会への協力 家電リサイクルシステム →家電リサイクル法 |
冷媒分解・処理 | 日本フルオロカーボン協会 | 分解・処理システム |
回収・再利用技術 | (社)日本冷凍空調工業会 (社)日本冷凍空調設備工業連合会 日本フルオロカーボン協会 | 冷媒フロン再生センター →冷媒回収推進・技術センター |
出典:内閣官房地球温暖化問題に関する懇談会中期目標検討委員会(第5回)資料
(作成:有限責任中間法人 フロン回収推進産業協議会)(PDF)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tikyuu/kaisai/dai05tyuuki/sankou1/5.pdf
(2)フロン回収・処理フローの例:業務用冷凍空調機器
業務用の冷凍空調機器の場合、回収フローは図2のようになる。業務用のエアコン、冷蔵・冷凍機器、自動販売機等の所有者は、これらの廃棄時に登録されたフロン回収業者にフロンを引き渡し、処理費用を支払う。フロン回収業者は、自らフロンを再利用・破壊する場合を除いて、許可を受けたフロン類破壊業者にフロンの破壊を委託する。家庭用エアコン、カーエアコンについては、家電リサイクル法、自動車リサイクル法にしたがって廃棄品が回収されるので、詳細はそれぞれ「家電リサイクル技術」「自動車リサイクル技術」の解説を参照されたい。
図2 業務用冷凍空調機器のフロンの流れ
出典:環境省「平成17年版 環境白書」
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/hakusyo.php3?kid=222
こうした取り組みの結果、表2に示すようにフロンの回収量は着実に増加している。しかし、フロンを使用する機器は多岐にわたり、一台の機器に使用されているフロンも少量であることが多いため、関係者への周知を徹底し、フロン回収率をさらに向上することが必要とされている。
機器 | フロン類の種類 | 平成15年度 | 平成16年度 | 平成17年度 | 平成18年度 |
---|---|---|---|---|---|
業務用冷凍空調機器 | CFC | 338 | 298 | 292 | 348 |
HCFC | 1,458 | 1,665 | 1,823 | 1,987 | |
HFC | 94 | 140 | 183 | 206 | |
計 | 1,889 | 2,102 | 2,298 | 2,541 | |
家庭用エアコン | HCFC | 858 | 989 | 1,112 | 1,024 |
HFC | 2 | 5 | 10 | 19 | |
計 | 860 | 994 | 1,122 | 1,043 | |
家庭用冷蔵冷凍庫 | CFC | 262 | 269 | 249 | 218 |
HCFC | 5 | 7 | 10 | 11 | |
HFC | 20 | 35 | 52 | 68 | |
計 | 287 | 311 | 311 | 298 | |
カーエアコン | CFC | 415 | 381 | 354 | 258 |
HFC | 223 | 321 | 457 | 546 | |
計 | 638 | 701 | 811 | 803 | |
モントリオール議定書 規制物質 | CFC | 1,015 | 947 | 894 | 824 |
HCFC | 2,320 | 2,662 | 2,945 | 3,022 | |
計 | 3,335 | 3,609 | 3,839 | 3,845 | |
京都議定書規制物質 | HFC | 339 | 500 | 701 | 840 |
合計 | 3,674 | 4,109 | 4,541 | 4,685 |
注1)小数点未満を四捨五入したため、表中の数値の和は必ずしも合計欄の値に一致しない。
注2)カーエアコンについては、自動車リサイクル法及びフロン回収・破壊法による回収の合計。自動車リサイクル法に基づく回収量は次の計算式により算出。
自動車製造業者等による引取量+フロン類回収業者による再利用量+フロン類回収業者による当年度末保管量-フロン類回収業者による前年度末保管量
出典:環境省「日本における冷媒フロン類の回収の状況(平成15年度~)」(PDF)
http://www.env.go.jp/earth/ozone/cfc/situation/situation02.pdf
(1)冷媒フロンの回収装置
冷媒フロン回収装置には、ガス状のフロンを吸引して圧縮機で圧縮し、圧縮ガスを冷却液化してボンベ(回収容器)に入れる「ガス圧縮方式」と、圧縮機で吸引・加圧したガスで液状のフロンを追い出して回収した後、残ったガスを圧縮回収する「複合方式」などがあり、各メーカーから回収装置が市販されている。
ガス圧縮方式は、図3に示すように、回収対象機器の冷媒ガスを回収装置内の圧縮機で直接吸引し、圧縮した後に凝縮器で液化させて回収容器に充填する方式である。回収ガスを直接吸引・圧縮・液化するため効率がよく、中・大容量の冷媒回収に適している。
図3 フロン回収装置(ガス圧縮方式)のフロー
出典:特許庁 標準技術資料集「空調技術」(PDF)
(原図は(社)日本冷凍空調工業会による)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/kutyou/2-4-1.pdf
複合方式は、図4に示すように、回収容器内の冷媒ガスを回収装置の圧縮機で吸引・加圧し、その加圧ガスを回収対象機器に注入して冷媒液を押し出し、液として回収する。その後、切替弁等でガス回収に切り替え、回収対象機器内に残留しているガスを回収する。液体とガスの両方で冷媒を回収するため、回収効率が良く、回収時間も短い。冷媒充てん量の多い機器に適した方法である。
図4 フロン回収装置(複合方式)のフロー
出典:特許庁 標準技術資料集「空調技術」(PDF)
(原図は(社)日本冷凍空調工業会による)
http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/kutyou/2-4-1.pdf
これらの回収装置が対象とするフロンは、従来のCFC12やHCFC22の他に、最近はHFC134aなどの新冷媒も回収でき、再生機能の付いた装置も出てきている。
(2)冷蔵庫・冷凍庫の断熱材フロンの回収・破壊
冷蔵庫・冷凍庫の冷媒として使用されるフロンは前述の方法に従って回収されているが、冷蔵庫・冷凍庫の断熱材に使用されているフロンは、冷蔵庫・冷凍庫を破砕した際に大気中に放出される。そこで、こうしたフロンを回収・破壊するための技術も開発されており、表3に示すように、活性炭方式、直接分解方式、低温凝縮回収方式(液化方式)などがある。直接分解方式では、破砕した冷蔵庫、エアコン中のフロンを隣接の焼却炉で直接燃焼させる。これに対して、活性炭方式、低温凝集回収方式では、いったん回収したフロンを別の施設に集めて破壊する。実際に図5に示すような断熱材フロンの回収プラントが実用化されている。
方式 | 工程の概要 |
---|---|
活性炭方式 |
|
直接分解方式 |
|
低温凝縮回収方式 |
|
出典:(財)家電製品協会 「家電リサイクル 年次報告書 平成17年度版」
http://www.aeha.or.jp/05/c.html
図5 フロン回収プラント(断熱フロン液化回収装置)の外観(JFEアーバンリサイクル(株))
出典:(社)プラスチック処理利用促進協会「プラスチック情報局:JFEスチール東日本製鉄所の総合リサイクル事業」(2004年2月)
http://www.pwmi.or.jp/public/special/special200402_02.html
現在、国連環境計画(UNEP)では、既存のフロン処理(破壊)技術としてロータリーキルン法、セメントキルン法およびプラズマ分解法等の7つの技術を推奨しており、これらがモントリオール議定書締約国会合で承認されている。
日本でも様々なフロン破壊技術が研究されており、実用化されている技術として4種類の方法について「CFC破壊処理ガイドライン」が策定され、破壊処理の要件が示されている。同ガイドラインに示されているフロン破壊技術は次の通りである。
[1]ロータリーキルン法:廃棄物焼却炉のロータリーキルン(円筒回転炉)を用いる方法
[2]セメントキルン法:セメント製造設備のロータリーキルンを用いる方法
[3]ロータリーキルン以外の既存の廃棄物焼却炉等を用いる方法(都市ごみ直接溶融炉、固定床二段燃焼等)
[4]専らCFC等を破壊処理するために開発された技術を用いる方法(高周波プラズマ法、高温水蒸気分解法など)
[1]~[3]については、フロンを一般廃棄物や産業廃棄物、セメント原料と共に焼却して分解する方法で、廃棄物等に含まれる水分が水素源となってフロンと反応し、分解が行われる(反応式は、後述する高周波プラズマ法の説明を参照)。現在、国内にあるフロン破壊処理施設の大部分は、こうした焼却・分解法である。ロータリーキルン、焼却炉の詳細については、「ガス化溶融」、「焼却処理」の解説を参照されたい。
以下、専らCFC等の破壊処理のために開発された技術について紹介する。
(1)高周波プラズマ法
プラズマは、正に荷電した粒子(イオン)と負に荷電した電子とが、全体として電気的中性を保ちながら、同じ密度で存在している状態のことを言い、固体、液体、気体に次ぐ第4の物質の存在形態とも呼ばれる。プラズマでは、物質がイオンと電子で存在するので、化学反応が速やかに進行する。
高周波プラズマ法とは、高周波の電磁場を与えて、高温のプラズマを発生させ、フロンと水を反応させる方法である。炉内温度は最高約10,000℃まで上昇できる。反応式は次のように表される。第一の反応で、フロンは塩酸とフッ酸に分解され、第二の反応でフッ素と塩素がCaF2とCaCl2になる(図6(上))。
CCl2F2 (CFC-12) + 2H2O → CO2 + 2HCl +2HF
2HCl + 2HF + 2Ca(OH)2 → CaF2 + CaCl2 + 4H2O
図6(下)は、高温で高濃度の塩酸とフッ酸に耐える材料を開発したことで、実用化に成功した高周波プラズマ法によるフロン分解装置の例である。このプラントは、特定フロンや代替フロンを70kg/h以上、99.999%以上の破壊効率で破壊していた(現在は解体されている)。
図6 高周波プラズマ法によるフロン処理のフロー(上)と、フロン分解装置(高周波プラズマ法)の外観(下)
出典:(上)日本電子(株)より提供
(下)日本電子(株)「JEOL技術情報:高周波熱プラズマの特徴を生かした用途開発」
http://www.jeol.co.jp/technical/ie/netu-plasma/netu001/tharmal-05.htm
(2)高温水蒸気分解法
フロンを水蒸気、助燃剤、空気の供給で1,200℃以上の高温の燃焼炉中で分解する方法である。フロンを15~165kg/hで供給し、99.999%以上の効率で分解できる(図7(上))。我が国では、処理能力2600トン/年の最大規模の処理施設(図7(下))において、高温水蒸気分解法が採用されている。
図7 高温水蒸気分解法のプラントの処理フロー(上)と外観(下)(イネオス・ケミカル(株)三原製造所)
出典:広島県 ウェブサイト「フロン破壊・代替フロン再生施設」
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/eco/i/i5/bingo/minkanshisetsu/ineoschemical/ineoschemical.htm
(3)その他
上記以外の方法として、触媒を用いて比較的穏やかな条件(500℃程度)でフロンを分解する「化学分解法」がある。この方法は、440℃以上に加熱した二酸化チタン(TiO2)、リン酸アルミニウム(AlPO4)などの固体触媒にフロンを接触させて反応を起こさせるもので、他の方法に比べてエネルギー的には有利であるが、大規模化は難しく、小規模の無害化施設に適している。
また、その他に、紫外線による分解方法も研究されているが、処理可能なフロンが限定されることや小規模な施設でしか適用できないことから、研究段階にとどまっている。
建材として使用される断熱材には、フロンを含有したり発泡剤としてフロンを使用しているものがあり、建築物の解体・修繕等にともなって、これらの断熱材中に含まれているフロンが大気中に放出される。断熱材からのフロンは法規制の対象となっていないが、関係者の自主的な取り組みによって、適正に処理されることが望ましい。環境省では、こうした背景から、平成12年度から「建材用断熱材フロン対策検討調査委員会」を設置し、断熱材中のフロン残存量の経年変化、実際の建築物の解体時の実態把握や断熱材フロン対策の方法などを調べている。この結果は、「建材用断熱材フロンの処理技術」として平成19年にとりまとめられた。
この報告書では、建設工事等の発注者、元請業者、下請業者、処理業者などが、解体工事や修繕、模様替え(リフォーム等)、新築などの際に、断熱剤中のフロンの回収・破壊処理を適正に実施できるように、必要な技術的手法や留意事項などが盛り込まれている。
パーフルオロカーボン類(PFC)は、炭素とフッ素のみから構成されるため不燃性で安定な性状であり、かつオゾン層破壊効果がないことから、フロン類の代替物質として利用される。しかし、一方で、PFCは強力な温室効果(CO2の6,500~9,200倍)を有していることから、類似のハイドロフルオロカーボン類(HFC)、六フッ化硫黄(SF6)と共に京都議定書の排出削減対象物質となっている。
そこで環境省では、PFCの排出抑制設備の開発と利用を促進するため、平成20年度に「液体PFC等破壊処理実験」を実施し、その結果を踏まえて平成21年3月に「PFC類処理ガイドライン」をとりまとめた。このガイドラインでも、ロータリーキルン、セメントキルン等での焼却技術が処理技術として取り上げられている。