九大と土研、プラごみの5%が海に流出・95%は陸で行方知らずと指摘
発表日:2022.03.02
九州大学と(国研)土木研究所・寒地土木研究所は、過去60数年間に環境中に漏れたプラスチックごみのうち、5%程度が海に流出し、それ以外は陸で行方知れずになっていると指摘した。世界中で陸から川を経て海に漏れたプラスチックごみの推計流出量と、海洋で実際に観測される浮遊プラスチックごみの現存量には大きな隔たりがある。こうした乖離は「ミッシング・プラスチックの謎」と呼ばれており、海洋プラスチック問題に係わる本格的な議論の妨げとなっている。両者は、大阪G20サミットで宣言された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン(目指す姿:海洋プラスチックの追加的な汚染を2050年までにゼロとする)」に資することを視野に入れ、重量ベースでの実測が困難なミッシング・プラスチックの定量化に挑戦した。今回新たに、1960年代以降に世界中でプラスチック利用が活発になったことや、腐食分解しづらいプラスチックごみは自然界のどこかに溜まり続けているという前提に基づき、仮想粒子を追跡する手法と線形物質収支モデルを組み合わせ、海陸のプラスチック動態を推計する手法を開発し、1961~2017年の海洋プラスチックに関するデータ(河川流出分および水産業由来)を与え、シミュレーションを実行した。その結果、当該期間の海洋プラスチックの総量は約2,500万トン(対象プラスチックの5%相当)と見積もられ、漂流・漂着するプラスチック(マクロプラスチック、マイクロプラスチック)や海底に沈降したプラスチックの内訳を明らかにすることができた。一方、残り95%は陸で消失、すなわちミッシング・プラスチックに相当すると考えられた。現在、議論されている海洋プラスチックの総量が歴史的に排出されたプラスチックごみに占める割合はごく僅かであると結論しつつ、ミッシング・プラスチックの将来的な海洋流出に着目した調査や、マイクロプラスチック等の動態把握が今後の研究ターゲットであり、広範な環境科学の研究者が関わるべきテーマになってくる、と述べている。