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 東大など、佐渡島沖でユニークな分岐を成すゴカイ類を発見(世界3例目)

発表日:2022.01.20


  東京大学とドイツ・ゲッティンゲン大学、新潟大学ほか国内2大学および海外3大学・研究機関からなる国際研究チームは、佐渡島近海における潜水調査により、これまで2種しか報告されていなかった珍奇な生物を発見した。今回発表された生物は、ミミズ、ヒルなどを含む無脊椎動物の一門(環形動物)に属する「シリス」科の新種。さまざまな海域に棲息しているゴカイ類の一系統で、環形動物に共通する特徴(体は細長く,体節に分かれており、口と肛門を軸に左右対称)を持っているものが多い。一方、こうした理解を覆す体軸が分岐したシリスが見つかっている。19世紀終盤に発見されたSyllis ramose(和名:カラクサシリス)は海綿動物の組織内に棲息していた。近年発見されたRamisyllis multicaudataは、複数の尾部から遊泳繁殖個体(ストロン)が遊離して繁殖を行う。しかし、こうした特異な形状や生態を示すシリスの情報は限られており、それが「左右相称動物」の研究停滞につながっていた。今回、同研究チームは、2019年10月に佐渡島南端の浅海で岩場(水深:10数m)に張り付いているカイメンを採集し、生時の観察、組織学的観察、免疫染色を行い、さらにDNAを抽出し、いくつかの遺伝子配列を決定した後に分子系統解析を行い、ミトコンドリアの全ゲノム配列も決定した。その結果、未知のシリスが見い出され、Ramisyllis multicaudataの近縁種であるが、別種であることが示唆された。特撮怪獣映画に登場するキングギドラ(頭部・首・尾が分岐している架空の宇宙怪獣)に因み、R. kingghidorahi(キングギドラシリス)と新種記載している。進化学的にも発生学的にも非常に興味深い種であり、今後の海洋生物学の進展に大きく寄与する可能性があるという。

情報源 東京大学大学院理学系研究科・理学部 ニュース
新潟大学 ニュース
機関 東京大学大学院理学系研究科・理学部 新潟大学
分野 自然環境
キーワード 佐渡島 | 分子系統解析 | ゴカイ | 環形動物 | カラクサシリス | ストロン | 左右相称動物 | キングギドラ | 新種記載 | 海洋生物学
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