千葉大学は、都市のショウジョウバエが昼夜を問わず活動的になっていることを明らかにした。都市化や交通網の発達により屋外の人工照明が増え、夜でも明るいエリアが拡大している。しかし、照明の過度な使用は、人間の健康や動植物の生態・生理に悪影響をおよぼすといった報告が相次ぎ、新たな公害「光害(ひかりがい)」の抑制・防止対策が進められている。他方、「遺伝子の後天的修飾(エピジェネティックス)」の働きが知られるようになり、光害を含む都市の環境ストレス(高温、騒音など)の遺伝的影響に関する調査研究が盛んに行われている。本研究は、光害と生物の繁栄・衰退に関する研究の一環として行われたもの。代表的なモデル生物であり、一般に昼行性と理解され、朝と日没前後に活動量が高まることが知られているショウジョウバエ類を対象としている。光害の影響評価に当たり、先ず、関東地方で果物の害虫であるオウトウショウジョウバエ(学名:Drosophila suzukii)を採集し、都市部と郊外の2系統(群)を入手した。次に、両群を夜間照明のある環境とない環境で繁殖させ、成虫の概日リズムなどをシンプルな手法を用いて調査した。全4グループ(①都市群・夜間照明なし、②郊外群・夜間照明なし、③都市群・夜間照明あり、④郊外群・夜間照明あり)を比較検証した結果、①と②は昼行性特有の二峰性の概日リズムを示すが、③と④において日没前後(夕方)の活動量ピークが消え、とりわけ④にあっては一日の活動量そのものが低下していることが明らかになった。すなわち、光害が昆虫の一日の活動パターンを激変させる要因であることが特定された。③を詳細に分析したところ、活動量の減少幅が小さく(④比)、あたかも夜行性の昆虫のように夜間に活発に活動する進化が起きていることが示唆された。併せて、③は高温への耐性が高く、逆に低温への耐性が低いといった知見も得られた。こうした活動パターンの変化は、種内の雌雄の出会いや、種間の相互作用に大きな影響を与える可能性があるという。本成果は、さまざまな生物種の栄枯盛衰の理解のみならず、都市化に伴う生物多様性の喪失を最小化するための方策を考える上で、重要な知見になり得ると述べている。
情報源 |
千葉大学 ピックアップ
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機関 | 千葉大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 生物多様性 | 適応 | 都市化 | 夜間照明 | ショウジョウバエ | エピジェネティックス | モデル生物 | 人工照明 | 暑熱耐性 | 概日リズム |
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