東京農工大学と山梨県富士山科学研究所の共同研究チームは、富士山北麓においてシカが高標高域に分布を拡げている要因を明らかにした。シカは長年、人間の捕獲圧を受けており、捕獲から逃れた個体は「恐怖の景観(Landscape of Fear)」を学習し、居住地を変えてきた。しかし、異なる生態系が分布する広大な地域を対象とした調査事例は少なく、捕獲圧がシカの行動範囲や採食行動に与える影響は不明な点が多い。本研究では、富士山北麓(山梨県側、標高880~2250m、面積約131km²)を対象とし、糞塊調査を通じて「恐怖の景観」によるシカの広域的な分布変化を解明した。具体的には、低標高域にある「居住地」、中腹で行われる「巻き狩り」、および「ササの現存量」がシカの分布に大きな影響を与えていることが判明した。また、慣習的な捕獲方法である巻き狩りがシカを非捕獲地域である高標高域へと移動させ、それがシカの採食圧に対して脆弱な植物の減少をもたらしている可能性が示唆された。さらに、ササが広葉草本や広葉樹を代替することで、シカの繁栄やカモシカとの競合関係に影響を与えるとする先行研究(Hiruma, M. et al. 2023)の結果も支持された。生態系保全の優先度が高い地域や、人間との軋轢を避けるために実施する市街地周辺での管理捕獲が有効、と提言している(DOI: https://doi.org/10.1163/15707563-bja10139)。
情報源 |
東京農工大学 プレスリリース
山梨県富士山科学研究所 ニュース&トピック |
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機関 | 東京農工大学 山梨県富士山科学研究所 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 富士山 | ニホンジカ | 捕獲圧 | 採食圧 | ササ | 生息地の選択 | 恐怖の景観 | 管理捕獲 | 巻き狩り |
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