日本貿易振興機構(JETRO)が2022年に刊行した地域・分析レポートによると、インターネットを通じて国や地域を超えてやり取りされるデータの量(越境インターネット帯域幅)は、インターネットを介したビジネスの増加に伴って飛躍的に伸びている。今後も5Gやメタバースの拡大により、越境データ取引のさらなる拡大が見込まれている。自由貿易協定(FTA)やその他の多国間貿易協定は、国境を越えた自由なデータ移転を許可・容認する方向で締結されているが、プライバシー、セキュリティ、国家安全保障の観点から越境データの流通を制限する動きも強まっている。しかし、越境データに関する多国間枠組みのルールは未だ形成されておらず、現状では各国がそれぞれの政策目的に基づいて対応している。──経済産業省は1月27日、企業の実務担当者向け「産業データの越境データ管理等に関するマニュアル」を公表した。このマニュアルは、IoTやDXの普及、サプライチェーンの透明化の要請等を背景に策定された。各国・地域においてデータに関する法制の整備が進められており、企業が保有する産業データの越境移転の制限や政府による強制的な開示等の規制が存在する。これらの規制は国際的な企業活動における制約要因となり、中長期的には日本の産業全体の競争力やデジタル基盤の確立・普及にも影響を及ぼすことが懸念される。経済産業省は「国際データガバナンスアドバイザリー委員会」及び「国際データガバナンス検討会」の下、2024年5月30日に「産業データサブワーキンググループ」を設置し、産業データの国際的な共有・利活用に伴うリスクと企業が取り得る打ち手等について整理を行ってきた。企業の規模や業種を問わず、製造業やITサービス業を含む幅広い産業を対象としており、主要な読者層として企業の事業部門、リスク・コンプライアンス部門、法務部門、データマネジメント部門等の実務担当者を想定している。