経済産業省は5月9日、「ウラノス・エコシステム・プロジェクト制度」に基づき、産業データ連携の先進事例として2件のプロジェクトを選定した。それらは、自動車・蓄電池の「カーボンフットプリント(CFP)」と「デューデリジェンス(DD)」データ連携を対象としており、全国8000万台のスマートメーターから得られる電力データを提供するプロジェクトである。──ウラノス・エコシステム・プロジェクト制度は2023年4月に創設された。同省が推進する「ウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)」の一環であり、「異なる事業者間で行われる、データに関するコントロール可能性及び参加者が使用するサービスの多様性が担保された、オープンなデータスペースを介したデータ連携」と定義されている。つまり、閉じたシステムではなく、誰もが参加可能な共通基盤上でのデータ共有を推進する枠組みだ。──この制度は、社会課題(人手不足、災害激甚化、脱炭素)を解決しつつ、経済成長と産業革新を両立させることを目的としている。すでに「人流・物流DX」では自律移動ロボットの運行環境を仮想空間に再現する「4次元時空間情報基盤」が、「商流・金流DX」では契約から決済までをデジタル化する「サプライチェーンデータ連携基盤」が構築されている。──今回選定された2件の「先導プロジェクト」は、データ連携機能のサービス提供をすでに開始しており、今後の横展開のモデルケースとなる。特に、欧州電池規則への対応を視野に入れたCFP・DDデータ連携は、国際競争力の強化にも直結する。──データはもはや単なる情報ではなく、社会課題を解決する「インフラ」となりつつある。ウラノス・エコシステムは、そうしたインフラを誰もが使える「公共財」として設計し、産業界の垣根を越えた連携を可能にする。今後も通年でプロジェクト募集が行われる予定であり、産業界の創意工夫が試されるフェーズに入ったと言えよう。