GX(グリーントランスフォーメーション)投資を引き出すための環境整備が急ピッチで進められている。2023年2月に「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、同年6月に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(通称:GX推進法)」が施行され、翌月には「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略(GX推進戦略)」が定められた。GX投資促進策の肝となるのは「『GX経済移行債』を活用した幅広い投資家層から資金調達」である。GX経済移行債は、今後10年間で150兆円を超える官民のGX投資が必要とされることから、政府が具体的な”道行き”を示しつつ、20兆円規模で発行することとされている。──今回、経済産業省は、GX実現に向けた投資促進策を具体化する「分野別投資戦略」をバージョンアップした。2023年12月に取りまとめた戦略をベースに、重点16分野を絞り込み、それらの分野におけるGXの方向性と投資促進策等を整理している。重点16分野として、鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、自動車、蓄電池、航空機、SAF、船舶、くらし、資源循環、半導体、水素等、次世代再エネ(ペロブスカイト太陽電池、浮体式洋上風力、次世代型地熱)、原子力、CCSが挙げられている。各分野の参考資料を見ると、「資源循環」では成長志向型・資源自律経済のあるべき姿が示され、「次世代再エネ」では各発電技術における日本の競争優位性が強調されており、企業の予見可能性を高めるための配慮がなされている。──分野別投資戦略の公表後も、政府はGX関連製品・事業の競争力を高めるための規制・制度の強化を図り、カーボンプライシングの段階的引上げなどを行う。今後も、国内GX市場の確立・拡大に向けた取り組みは続く。