九州工業大学大学院工学研究院の吉田嘉晃准教授とフランス・ロレーヌ大学のDimitrios Meimaroglou准教授らは、自己修復性とリサイクル性を兼ね備えた光学樹脂「ポリジチオウレタン(PDTU)」の開発に成功した。PDTUは、光学特性に優れ、常温常圧で傷や破断が自然に修復されるフィルムを形成できるほか、加熱により原料に分解し、再成形することで性能を回復できるという。
従来、光学フィルムに用いられる樹脂は、光学特性・自己修復性・リサイクル性のいずれかに特化して設計されており、これらすべてを兼ね備えた材料は存在しなかった。本研究では、ジイソチオシアナート類とジチオール類の重付加反応を用いてPDTUを合成し、分子間の弱い水素結合を活用することで自己修復性を実現。さらに、加熱による可逆的な分解・再重合反応を通じて、リサイクル性も確認された。──実験では、破断したフィルムを常温で静置することで数分〜数時間で接合・修復され、強度も回復することが示された。修復性能が低下したフィルムも、溶媒中で加熱・再成形することで性能を回復できることが確認された。また、PDTUは硫黄含有率が高く、屈折率1.655、アッベ数25.5〜27.7と、既存の高屈折率樹脂と同等の光学性能を有する。
この成果は、スマートフォンやメガネレンズの保護フィルム、ARグラスなどの高性能光学製品への応用が期待される。さらに、廃棄物削減や資源循環の観点からも意義が大きく、今後は無溶剤・無触媒による環境負荷の低い製造・リサイクル技術の開発が課題となる。研究グループは、今回開発したPDTUを「傷ついても修復し、壊れても再生できる材料」として、脱炭素社会や循環経済の構築に貢献するものと強調してている(掲載誌:掲載誌:Journal of Polymer Science (est. 1946))。
情報源 |
九州工業大学 プレスリリース
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機関 | 九州工業大学 ロレーヌ大学 |
分野 |
地球環境 ごみ・リサイクル |
キーワード | グリーンケミストリー | ケミカルリサイクル | 循環経済 | 自己修復性 | 光学樹脂 | 易リサイクル性 | 屈折率 | アッベ数 | 高分子設計 | 保護フィルム |
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