東北大学材料科学高等研究所(WPI-AIMR)藪浩教授らの研究グループは、北海道大学電子科学研究所、AZUL Energyらとの共同研究により、二酸化炭素(CO₂)を一酸化炭素(CO)へと高効率で変換する新たな電気化学触媒を開発した。
CO2の排出削減と資源化は地球温暖化対策の重要課題であり、電気化学的還元(ECR)は再生可能エネルギーを活用したカーボンリサイクル技術として注目されている。既存の貴金属触媒は高コスト・低選択性といった課題があり、分子状触媒も導電性や安定性に難があった。――本研究は、これらの課題を克服する新たな設計原理として「多層構造×コアシェル型触媒」の有効性を示したものである(掲載誌:Applied Catalysts B: Environment and Energy)。
具体的には、AIを活用した大規模データ解析により、220種類の候補物質の中から青色顔料として知られるコバルトフタロシアニン(CoPc)を最適な触媒分子として選定。さらに、カーボン素材であるケッチェンブラック(KB)上にCoPcの多層結晶を形成することで、炭素コア・シェル型構造を構築した。この構造により、電極表面の反応比表面積が増加し、電子伝達効率が向上。結果として、–595 mA/cm²の高電流密度、6,537 A/gの質量活性、100時間以上にわたる90%以上のCO選択性(ファラデー効率)を達成した。これらの性能は、従来の金属錯体触媒を上回るものであり、理論計算によっても多層構造が活性中心の電子状態を最適化し、反応経路を有利にすることが裏付けられた。