東北大学大学院工学研究科の研究グループは、人口減少社会における上下水道インフラ更新に向け、集中型下水道と分散型浄化槽を組み合わせた水浄化システム(本研究では「集中分散ベストミックス」)を定量的に導出する新たな数理最適化モデルを開発した。本モデルは、費用、温室効果ガス排出量、バイオガス回収量を統合的に評価し、費用と環境負荷を同時に低減できることを示したものである(掲載誌:Water Research)。
上下水道インフラの老朽化が進み、人口減少が加速している。従来の大規模集中型システムは、一定以上の人口密度がある都市部では効率的に機能する。しかし、人口が減少し世帯密度が低下する地域では、長距離の管路や大規模施設を維持するための費用や運転コストがかさみ、現行の規模を維持し続けることが困難になる。
そこで本研究では、将来の人口動態を踏まえ、集中型と分散型を柔軟に組み合わせることで、安全性と快適性を維持しつつ投資負担を軽減できる可能性を検証した。開発したモデルは、区域を250 mメッシュに分割し、各メッシュに「下水道」または「浄化槽」を割り当てる操作変数を設定したもの。更新後50年間の工事費・維持管理費・温室効果ガス排出量を最小化し、さらにバイオガス回収量を最大化する条件で最適解を探索した。その結果、現状維持パターンでは費用負担が最大化し、全戸浄化槽化パターンでは環境負荷が増加するが、費用と環境負荷を同時に低減できる「最適組み合わせ」の存在が明らかになった。
研究グループは、「下水道の全面維持か全面浄化槽化かという二者択一ではなく、地域の人口密度や減少率に応じたハイブリッド設計が現実解である。費用と温室効果ガスの同時最小化を図る配置計画により、持続可能で高効率な上下水道サービスを維持できる」と述べている。
| 情報源 |
東北大学 プレスリリース・研究成果
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|---|---|
| 機関 | 東北大学 |
| 分野 |
水・土壌環境 |
| キーワード | 温室効果ガス | 下水道 | 浄化槽 | 人口減少 | 上下水道インフラ | 数理最適化 | 集中分散ベストミックス | バイオガス回収 | ダウンサイジング | 維持管理費 |
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