気象庁気象研究所(気象研)は、2010年以降に観測された地球のエネルギー吸収量の増加が、エーロゾル排出量の減少に伴う有効放射強制力の増大によって説明され得ることを示した(掲載誌:Geophysical Research Letters)。衛星観測と気候モデルを比較し、近年顕著となった地球の放射収支の不均衡について、その成因の切り分けを行った成果である。
近年、衛星観測から地球全体の太陽放射反射率が低下し、吸収エネルギーが増大していることが報告されてきた。この変化は、近年の記録的高温の一因となった可能性が指摘されているが、地表温度上昇に伴う応答(フィードバック)と、外部要因による影響の寄与は十分に整理されてこなかった。特に、エーロゾルによる放射効果には大きな不確実性が残っており、気候モデルが近年の観測傾向を過小評価している可能性が示唆されていた。
本研究では、衛星による大気上端放射観測と地表温度の観測記録を用い、放射収支の変化を応答成分と有効放射強制力成分に分離した。評価指標として、短波放射および長波放射の年々変動とトレンドを用い、世界気候研究計画の結合モデル相互比較第六期の複数モデル結果と比較した。解析は地球平均値を対象とし、2001~2024年および2010~2024年の期間別に線形トレンドを評価した。
解析の結果、2010~2024年における地表温度は10年あたり0.33±0.11℃上昇していた一方、太陽放射吸収量は10年あたり1.35±0.30ワット毎平方メートルの増加を示した。このうち、短波放射における有効放射強制力の増加が約1.0ワット毎平方メートル/10年を占め、吸収量増大の主要因であることが示唆された。モデル平均はこの傾向を大きく過小評価しており、エーロゾル減少に伴う雲反射の低下を十分に再現できていない可能性が示された。
研究グループは、観測に基づく有効放射強制力の推定が、現在進行する気候変化の理解に重要な知見を与えると述べている。今後は、放射強制力増大の物理的要因の解明やエーロゾルと雲の相互作用の理解、気候モデルの再現性向上を進める方針である。