近い将来「干ばつ」の激化と常態化が始まる 国環研など
発表日:2022.06.28
国立環境研究所と12の大学・研究機関(日・韓・米・英・独・蘭)からなる国際研究チームは、干ばつ(水文的干ばつ)発生の概念を一般化し、近い将来に未曾有の干ばつが5年以上続く期間が数回訪れ、今世紀の半ば以降に常態化する可能性があると指摘した。地球温暖化に伴う異常気象の激化・高頻度化が懸念されている。過去の観測値を上回る高温や豪雨が世界的な関心事となっており、それらの発生時期や発生頻度の推定に関する研究が盛んに進められている。一方、水資源の枯渇をはじめ、農業などに甚大な被害をもたらす大きな「干ばつ」については、これまで発生時期等の予測が十分に行われてこなかった。同チームは、「河川流量の変化」に着目し、それぞれの領域での干ばつ頻度が過去の参照期間(1865-2005年)の最大値を継続して何年も超過するようになる「最初のタイミング(TFE:Time of First Emergence of consecutive unprecedented drought)」を、異常な干ばつが異常でなくなる時期(常態化してしまう時期)を定義した。本研究では、流域単位で定めた全球59地域ブロックに関し、過去最大の干ばつ頻度を少なくとも5年以上継続して超える時期(以下「TFE5」)を指標とする評価を行っている。具体的には、同チームが取り組んできた温暖化影響評価モデル比較プロジェクトの成果(水文シミュレーションデータセット)を用いて、1861年から2099年の全球河川流量データを解析するとともに、脱炭素社会実現シナリオ(RCP2.6)と地球温暖化進行シナリオ(RCP8.5)における変動を推定した。その結果、今世紀の前半にTFE5が計3回(連続15年以上)起こり、その後50年間はより高いレベルで推移することが明らかになった。また、温暖化影響には地域格差があり、TFEの全球分布はそれを反映したものとなった。この結果は、干ばつの増加が見込まれる地域と、減少する地域が報告されていることを整合しており、特定の地域(地中海沿岸域、南米の南部と中部、オーストラリアなど)がホットスポットとして特定された。これらの知見は脱炭素社会の実現に向けた緩和策推進の重要性を示すものであり、特定の地域では今後数10年程度の間に適応策を効率的かつ迅速に進める必要がある、と提言している。
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