白亜紀前期の海洋生物絶滅イベント、新たな証拠みつかる
発表日:2024.11.21
東北大学総合学術博物館の髙嶋教授と米国ウィスコンシン大学のSinger教授らの研究グループは、白亜紀前期に発生した「海洋無酸素事変(Oceanic Anoxic Event 1a、以下OAE1a)」の詳細な年代を明らかにした。──OAE1aは、地球規模の急激な温暖化と海洋における無酸素水塊の拡大により、多くの海洋生物が絶滅した大事変であるが、その正確な年代は特定されていなかった。研究グループは、北海道芦別市の蝦夷層群からOAE1a時期に堆積した地層を発見し、そこに数多くの火山灰層が挟まっていることを確認した。さらに、それらの火山灰層からジルコンを抽出し、U-Pb放射年代測定法で年代を測定した結果、OAE1aは1億1955万年前に発生し、その後111.6万年間、海洋の広い範囲で「無酸素環境が持続」したことが判明した。また、一部の地層から発見された浮遊性有孔虫化石から、白亜紀最大の海底火山体「オントンジャワ海台」の噴火とOAE1aの発生がほぼ同時であったことが推定され、オスミウム同位体比の検討から、オントンジャワ海台の噴火がOAE1aを引き起こした可能性が実証された。この研究成果は、地球温暖化の進行がもたらす気候・環境変動と生態系への影響を評価するうえで有益であり、今後の気候変動予測や環境保護対策に重要な示唆を与えるものである。