イギリス自然環境研究会議(NERC)は、急激な気候変化の要因となる海洋循環について、メカニズム解明のための研究プログラムの成果を公表した。10~20年といった短期間での急激な気候変化は、予測や適応を困難にし、対策コストを引き上げるおそれがある。この研究では、アフリカのサハラ沿岸からバハマまでの大西洋に計器を配置し、大西洋の深層循環(MOC)、いわゆる大西洋暖流コンベア(暖かい海水を北方に運び、欧州の気候を温暖にしている)のデータを記録。約8000年前、イギリスや北欧一帯は非常に寒く乾燥していたが、寒冷化に要した時間はわずか十数年で、その状態が約160年継続したことを明らかにした。また、得られたデータ等から過去50年間の大西洋コンベアの動態を復元し、最近の気候変化に対する理解と、気候モデルや将来予測の精度向上に役立てている。NERCは、今後、アメリカ、ドイツ、カナダ等の科学者やイギリス気象庁と協力し、環大西洋でこのモニタリングを継続する予定。