イギリスの科学者チームは、温暖化によりツンドラ地帯に森林が拡大すると、土壌から大気へCO2が放出され、さらに温暖化が進む可能性があるとの研究結果を発表した。この研究では、スウェーデン北極圏において、ツンドラ及びそれに隣接するカバ林を対象に、植物や土壌に含まれる炭素の量を比較。その結果、カバ林の植物にはツンドラの2倍の炭素が貯蔵されるが、それより多くの炭素が林の土壌から失われることがわかった。放出されたCO2の放射性炭素含有量測定により、カバの木は土壌中の有機物質の分解を促進し、土壌の炭素貯蔵量の低下に直接寄与することが判明したという。これまで、森林が拡大すれば、植物が大気中から吸収するCO2量が増加すると考えられていたが、北極圏では、逆に土壌中の炭素が大気中に大量放出される可能性があることが、この研究で示唆された。しかも、北極圏土壌中の炭素量は大気中の炭素量よりも多いため、気候変動に大きな影響を与える恐れがあるという。ただし今回の結果が、他の北極圏地域や高山生態系に当てはまるかどうかは不明だという。