東京工業大学は、アンモニア合成の大幅な省エネ化を可能にした新メカニズムを発見したと発表した。アンモニアは、窒素肥料原料として膨大な量が生産され、最近では燃料電池などのエネルギー源(水素エネルギーキャリア)としても期待が高まっている。これまでどの触媒を用いても、強固な三重結合を持つ窒素分子の切断に高温、高圧の条件が必要であった。今回、研究グループでは、同位体を用いた窒素交換反応に計算科学を導入することで、この触媒上では窒素分子の切断の活性化エネルギーが既存触媒の半分以下に低減し、その切断反応がアンモニア合成の律速段階ではないことを見いだした。また、速度論解析や水素吸蔵特性を調べることで、エレクトライド触媒の水素吸蔵特性が反応メカニズムに大きな影響を与え、窒素-水素の結合の形成過程が律速段階であることを示唆した。今回の成果により、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化に向けた触媒開発の有力な手がかりが得られ、今後、この結果を利用したさまざまな化学反応への応用が期待できるという。