東北大学は、簡便な工業的手法で完全レアアースフリーなFeNi磁石の作成に成功したと発表した。ネオジム磁石は、次世代自動車や家電、産業機械の心臓部である省エネモータ等に幅広い用途で使われ、産業や社会基盤を支えている。しかし、最近のレアアース元素(希土類)の輸出規制などにより、レアアースに依存しない日本発の新規高性能磁石開発が最重要課題となっている。一方、宇宙空間で超徐冷(超平衡状態)して形成された天然隕石中に極微量含まれるFe-Ni(鉄-ニッケル)磁石は、ネオジム磁石並みの磁石特性を示すと予測されている。今回成功した磁石は、従来必須とされていたSm(サマリウム)、Nd(ネオジム)やDy(ジスプロシウム)などのレアアース元素を全く含まないFeNi磁石。アモルファス金属が熱処理によりナノ結晶化する時の超高速原子移動を利用し、数十億年かかる隕石磁石を300時間でより高品位に再現した。今回の成果により、レアアース供給リスクを一気に解決し、省エネ技術を基盤とする産業全体優位性確保が期待できるという。