名古屋大学の研究グループは、(一財)日本環境衛生センター・アジア大気汚染研究 センターの研究者と共に、森林の「窒素飽和ステージ」を定量的に評価する手法を考 案した。大気中の硝酸が降水などを通じて森林域に供給され続けると、過剰になった 窒素が硝酸(イオン)として森林域外に流出する。こうした「窒素飽和」と呼ばれる 現象は湖沼・海洋域の環境負荷増大の要因と見られており、欧米では渓流水中の硝酸 濃度の季節変化の有無を評価指標としている。同研究グループは、窒素飽和が生じる メカニズムを俯瞰し、1)渓流水中の硝酸のなかの「酸素の同位体組成」を測定し、 2)大気硝酸のうち森林に利用されなかった硝酸の比率「直接流出率」を算定すること で、3)森林の健康度とも言える「窒素飽和ステージ」を表すことに成功した。直接流 出率の活用により4)窒素飽和に起因する窒素増大と人為的窒素汚染等に起因する窒素 増大の区別や、5)間伐などの森林管理による窒素飽和緩和策の効果検証も可能になる という。