海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、深海性二枚貝から残留性有機汚染物質(POPs)を検出し、過去30年間の汚染実態を明らかにした。海洋生態系におけるPOPsの集積や広がりが懸念されており、魚類や浅海性二枚貝(イガイ・カキ等)を用いたPOPs分布情報の収集が進められているが、深海生物での情報は十分ではない。JAMSTECは、海底火山や断層域において、熱水噴出や湧水に含まれる硫化物やメタンをエネルギー源とする生態系(以下「深海化学合成生態系」)に着目し、1989~2019年にかけて深海化学合成生態系の代表的な二枚貝である「シロウリガイ類」や「シンカイヒバリガイ類」を継続的に採取してきた。今回、相模湾初島沖と数100km南方の伊豆・小笠原弧のサンプルを用いて、難溶性で藻類やプラスチック粒子などに付着して長距離を運ばれる可能性が高い、ポリ塩化ビフェニル(PCB)とポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)の含有量を分析した結果、すべてのサンプルからPCBが検出された。また、シロウリガイ類について、10年毎に採取されたサンプル(保存サンプル含む)を比較分析したところ、2010年以降にPCB含有量が減少に転じたことが分かり、PCB排出規制が汚染の低減に有効であることが示唆された。しかし、人口密集地域と離れた伊豆・小笠原弧までPOPs汚染が広がっていることは真摯に受け止める必要がある。引き続き、鰓に共生する細菌の栄養に依存する非摂食性の深海性二枚貝を指標とし、脆弱な深海生態系の保全に向けた詳細調査や対策検討に取り組むと述べている。