神戸大学・内海域環境教育研究センターの川井浩史特命教授と、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター室蘭臨海実験所の本村泰三名誉教授は、紅藻の一種である「カギケノリ」藻体の先端部(成長部分)の「光を受けた時の色(構造色)」が青く、その原因が腺細胞内の微細構造によるものであることを発見した。──カギケノリの腺細胞内に見られる光屈折小体と呼ばれる小胞には、ブロモフォルムなどの有機ハロゲン化合物が含まれており、牛などの反芻動物のゲップに含まれるメタンの生成を抑制する能力を持つことから、近年注目を集めている。また、カギケノリ養殖は、海洋生態系の保全と炭素固定に役立つと考えられている。──今回の研究では、光屈折小体に含まれる微小な顆粒が均質に配置されることで構造色が生じていることが明らかになった。また、光屈折小体が壊れると、きわめて短時間で腺細胞だけでなく周辺の組織も破壊することから、これらの化合物は有害物質として藻食動物に対する摂食忌避の機能をもっており、鮮やかな構造色と摂食忌避物質を組み合わせることで、警告色として成長に重要な先端部分を外敵からまもる役割を果たしている可能性が考えられる。一方、藻体の他の部分では、光屈折小体の構造が乱れることによって特定の色が現れず、白っぽい外観を呈することも明らかになった。これにより、藻体全体や生殖器官の赤い色が隠され、周囲の環境に溶け込むカモフラージュ(保護色)として機能している可能性も考えられる。──地球温暖化防止において多面的な効果を持つとされる、カギケノリへの注目がますます高まることになるだろう。
情報源 |
神戸大学 プレスリリース
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機関 | 神戸大学 北海道大学北方生物圏フィールド科学センター |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 持続可能 | 環境保全 | 海洋生態系 | 炭素固定 | ブルーカーボン | 温暖化防止 | カギケノリ | メタン削減 | ゲップ抑制 | 飼料添加剤 |
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