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 神戸大など、マリモの年齢と巨大化メカニズムの詳細を解明

発表日:2021.12.01


  神戸大学(工学研究科および医学部附属病院)、釧路市教育委員会ほか北海道内の大学・建設関連企業からなる研究グループは、マリモ(学名:Aegagropila linnaei)の年齢推定と内部の栄養供給プロセスの解明に成功した。美しい球状のマリモは、細い糸状の緑藻(個体)が回転運動と光合成を行いながら成長したものである。湖沼の富栄養化などによって世界的に個体数が減少し、日本で直径10 cm超のマリモ(以下「巨大マリモ」)が確認できるのは北海道の「阿寒湖」に限られている。阿寒湖の巨大マリモは特別天然記念物に指定されているが、成長速度や栄養供給機構といった維持管理に係わる情報は不十分であった。同グループは、切断などを伴わない非破壊検査の必要性をかんがみ、医療分野で利用されているmagnetic resonance imaging(MRI)を用いて巨大マリモの内部構造を調査した。その結果、表面から4~5 cmの間に「縞状の模様」が刻まれていることを見出した。マリモが球体化・成長する過程においては、風波によって回転・振動しながら表面が「研磨」される段階(湖に氷が張っていないシーズン)と、ほとんど動かずに表面が粗くなる段階(結氷期)が繰り返し起きると考えられている。今回確認された縞状の模様は「樹木の年輪」に相当すると思われるため、その幅・本数からマリモの年齢を見積もることができる。一方、表面から4~5 cmからさらに内側は空洞化しており、剥離したマリモ個体の塊が詰まっていることが確認されている。それらは空洞内で分解し、外部にゆっくりと溶出し、光合成を手助けしている可能性も示唆された。これらの新知見は、MRI計測の有効性を裏付け、マリモが有する「地上最小スケールの栄養循環」を明らかにしたものであり、「炭鉱のカナリア」に喩え、地球温暖化に伴う希少かつ脆弱な巨大マリモの保全や、水圏環境の不可逆的な劣化リスクの回避を訴えている。

情報源 神戸大学 Research News
機関 神戸大学 釧路市教育委員会 北見工業大学 (株)西村組 (株)豊水設計
分野 自然環境
キーワード 地球温暖化 | MRI | 年輪 | 特別天然記念物 | 阿寒湖 | マリモ | 風波 | 結氷期 | 地上最小スケールの栄養循環 | 水圏環境
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