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 農研機構、農地の炭素量増加による相乗効果を推定(世界規模評価)

発表日:2022.03.29


  農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、農地の炭素量増加による3つの相乗効果(作物増収・温暖化緩和・窒素投入量の節減)が最大化された姿を明らかにした。土壌中の炭素量を増やす農地管理(例:有機物施用など)は作物の増収につながり、農地の炭素貯留を介して大気中のCO2濃度減少、ひいては温暖化緩和に貢献する。こうした多面的な効果への理解が進む中、農地の土壌炭素量を増やすことを通じて温暖化緩和と食料安全保障の達成を目指す国際的な取組「4パーミルイニシアチブ」が2015年からフランスの主導で始まり、日本を含む413の国や国際機関・NPO(2019年12月現在)により本格推進されている。農研機構は、増収効果と多様な環境保全効果を世界規模で定量評価した事例が見当たらないことから、世界の主要穀物の収量と気候、土壌、栽培管理のデータを組み合わせ、農地土壌の表層30cmまでに含まれる炭素量と収量の関係を機械学習により解析し、得られた知見(窒素投入量と収量の関係)を用いてコンピュータシミュレーションを行い、土壌炭素量の増加により期待される穀物生産量の増加を推計した。その結果、土壌炭素量の増加に伴い収量は増えるものの、やがて増収効果は頭打ちになると推定された。また、増収効果が見込める範囲で最大限土壌炭素量を増やすケースにおいて、土壌炭素の増加量は世界全体で127.8億トンと推計され、このときの世界の生産量増加は6穀物合計で3,825万トン、世界の気温上昇を抑制する効果は0.03°Cと見積もられた。さらに土壌炭素量の増加によるこの増収効果は、無機窒素肥料であれば投入量582万トンによって得られる増収効果に相当すると推計された。この推計値は世界の窒素投入量の7.2%(2000年ベース)に相当する。すなわち土壌炭素量の増加は、無機窒素肥料の過剰投入の抑制を通じて「水質保全」に寄与することが示唆された。本研究の成果は、「土壌炭素量を増加する農地管理」を促進する制度設計や、各国政府や国際機関の施策決定の資料として役立つとしている。

情報源 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 プレスリリース
機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構
分野 地球環境
水・土壌環境
キーワード 水質保全 | 環境保全効果 | 相乗効果 | 土壌炭素量 | 農地管理 | 有機物施用 | 温暖化緩和 | 4パーミルイニシアチブ | 増収効果 | 無機窒素肥料
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