京都大学大学院工学研究科の沼田教授(理化学研究所チームリーダーを兼任)が率いるプロジェクトチームは、京大発バイオマテリアルベンチャー・Symbiobe(株)と協同で、ゼロカーボン水産養殖用飼料の作出に成功した。同プロジェクトチームは、JSTの「共創の場形成支援プログラム(地域共創分野・育成型)」の支援のもと、「ゼロカーボンバイオ産業創出による資源循環共創拠点」の形成を目指す産学官連携事業に取り組んでいる。「ゼロカーボン」実現の鍵を握るのは、沼田教授らが発見した「紅色光合成細菌」。微生物が大気中のCO2や窒素等を取り込む能力をベースにGHG削減を図りつつ、多様なものづくり等に繋げていくことがプロジェクト全体の狙いとなっている。今回の成果は、「ゼロカーボン水産業(高タンパク質飼料)」の実現に向けて、(公財)京都産業21の「産学公の森推進事業 Ⅱ事業化促進コース」の支援も受けて生み出された。京都府北部の舞鶴市などでは漁業・養殖業が盛んに行われている。しかし、近年では天然魚の漁獲量が不安定となり、燃料コストがかさむといった地域課題に苛まれており、水産養殖用飼料に50%程度配合されている「魚粉(原料:近海の天然魚)」の確保が危ぶまれている。今回、同プロジェクトチームは、紅色光合成細菌が蓄えた光合成代謝産物やタンパク質・アミノ酸等を利用して、独自の製造プロセスによる水産養殖用飼料の調製を試行した。試作飼料をメダカに14日間の給餌し、観察した結果、魚粉等を配合した市販飼料と同等の成長を遂げることが確認された。養殖試験場におけるカワハギ等への給餌試験も順次実施しており、GHGを原材料としたサステナブルな水産養殖用飼料原料の生産拡大、ひいては次世代型水産養殖業の浸透・普及に迫っているという。