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 窒素・リンはアクセルかブレーキか?栄養塩の絶対量ベースで一般化 京大

発表日:2022.08.10


  京都大学は、植物プランクトンの成長にとって窒素(N)・リン(P)のどちらが重要か?という疑問を、オリジナリティ溢れる手法で解き明かした。植物プランクトンは水中の栄養塩からN・Pなどの多様な元素を取り込み、光合成(有機物生産)を行っている。海・湖沼・河川などの水域が貧栄養から富栄養に移行(富栄養化)すると、植物プランクトンの増殖が促進される。人間活動に由来する富栄養化は、しばしばアオコ発生などの環境問題を引き起こす。しかし、植物プランクトンの増殖そのものは、水圏生態系の生産性や物質循環にとってはプラスに作用することが少なくない。植物プランクトンが必要とする栄養塩は種によって異なることが分かっており、主要な元素であるN・Pの相対的な役割の解明に向けた研究が進められている。N・Pの「相対的要求量」については、水質の指標としても知られているN:P比(N/P比ともいう)を用いた評価などが行われてきた。しかしながら、従来の調査研究ではN・P総濃度(以下「栄養塩レベル」)が看過されることが多く、それが実環境における植物プランクトンの生態に対する誤解などを招いていた。同大学は、8つの植物プランクトン種を対象とする実験(3種)・文献調査(5種)を組み合わせ、「相対的要求量」をめぐる議論を整理した。実験等は、異なる栄養塩レベルにおける「最適なN:P供給比」を明らかにすることを目的として行われた。実験データ等に基づき、「最適なN:P供給比」をプロットした結果、栄養塩レベル-最適なN:P 供給比の関係性が明らかになった。得られたカーブ(本研究では非線形)から、栄養塩レベルが高くなるにつれて「最適なN:P供給比」は有意に低下することが明らかになった。すなわち、貧栄養ではNが成長を促進し、富栄養ではPが成長を制限する傾向(勾配)を初めて図解し、説明することに成功した。今回明らかになったN制限・P制限に関する知見は、水圏生態系ならば広く適用できるものであり、閉鎖性水域(淡水域)の水質保全に係わる議論や対策実施に貢献する可能性が大きい、と述べている。

情報源 京都大学 Latest research news
機関 京都大学
分野 自然環境
水・土壌環境
キーワード 栄養塩 | 水質保全 | 植物プランクトン | 栄養レベル | 制限要因 | 相対的要求量 | N:P比 | 最適なN:P比 | N制限 | P制限
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