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 湿原の機能は「植物群・微生物群」に支えられている! 横浜国大など

発表日:2022.08.04


  横浜国立大学、東北大学、ドイツ統合生物多様性研究センターほか国内外2大学からなる国際共同研究グループは、湿原(moorland)が有する多様な機能が「植物群・微生物群」によって支えられていることを実証した。近年、生態系の機能やサービスの安定に対して、「生物多様性」が強く関与していることを示す実証的証拠が増えている。例えば大規模な草原では、種の非同期性や環境応答が多様な機能の安定性に貢献していることが分かってきた(ex. Sasaki, T. et al., 2019)。今回、同研究グループは、山岳域や寒冷地などに位置し、点在する手つかずの湿原群(以下「山岳湿原群」)に着目した。湿原は、多様な生物を育み、天然の貯水池・防災ダムとして、さらには“炭素貯蔵庫”の役割を果たしている。本研究では、“山岳湿原は面積的には狭小であるが地球環境にとって重要な生態系である”といった視座から、山岳湿原の生物多様性と有機物分解の特性を踏まえた新たなモデルフレームを設計し、炭素循環に係わる機能に焦点を当てた解析を行っている。具体的には、湿原の多様な機能を表す目的変数(ecosystem multifunctionality:生態系の多機能性)を定義し、フィールド調査(於:青森県八甲田山系の山岳湿原群)によって得られた環境や空間構成のデータと、植物(地上部)および微生物(地下部)の群集構成に関するデータを用いて説明している。個々の湿原では、種の豊富さ(α多様度)は山岳湿原の機能にあまり貢献しておらず、特定の植物群・微生物群が正の効果を与えていることが明らかになった。一方、湿原どうしを比べ、生態系(場)全体の生物多様性と機能の多様性(β多様度)を評価したところ、植物群・微生物群の多様性・異質性が多様であるほど、湿原の機能も多様化することが分かった。湿原生態系が地球環境に果たす機能を保全するに当たっては、多様かつ異質な植物群集の保全~多様な微生物群集の保全促進の流れを維持することが重要、と結論している。

情報源 横浜国立大学 プレスリリース
機関 横浜国立大学 東北大学 秋田県立大学 ドイツ統合生物多様性研究センター ライプツィヒ大学
分野 地球環境
自然環境
キーワード 生物多様性 | 生態系サービス | 炭素循環 | 湿原 | β多様性 | α多様性 | 多機能性 | 山岳湿原群 | 八甲田山 | 植物群・微生物群
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