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 東大、オープンサイエンス時代ならではの水田分布図シリーズを公開

発表日:2022.08.24


  東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループは、これまでに例を見ない超長期・高精細・高汎用性「水田分布図(1985~2019年)」の作成に成功した。近年、人工衛星に搭載された光学センサーによって取得された衛星画像(デジタルデータ)の利活用が進んでいる。土地利用・植生被覆などを分類する手法の高度化も手伝い、航空写真と遜色のない広域マップが作成され、広く使われるようになってきた。他方、都市化や耕作放棄などを受け、国土全体の水田分布は目まぐるしく変化している。食料安全保障のみならず、地球環境に資する機能維持の観点からも、水田分布の推定がますます重要となっている。同研究グループは、世界的に2000年代以前の“衛星画像を使用した数10m解像度の広域の水田分布図”が見当たらないことを大きな問題ととらえ、従来の衛星画像解析における技術的課題の解決、さらにはビッグデータの活用可能性を視野に入れた調査研究をデザインした。2000年代以前の衛星画像解析を難しくさせているのは雲の被覆などによるデータ欠損であり、2000年代以降は膨大な衛星データの一層活用を図る必要がある。これらの課題等を同時解決するために、本研究では先ず、データが少ない期間でも水田を識別できる新手法を編み出した。当該手法は、稲作の水利慣行・水管理に伴う光反射特性の季節変化に着目したもので、米国の地球観測衛星Landsatのデータをピクセル単位(30 m角)で推定し、都道府県の栽培スケジュール(農事暦)を考慮することで識別誤差の最少化を実現している。既に膨大な衛星データを蓄積しているGoogle Earth Engineにおいて、光反射特性の季節性を反映した時系列解析アルゴリズムを実行した結果、精細な「水田分布図(1985~2019年)」が得られた。この地図は5年単位×7年代(枚)に区分されている。1985-89年代と2015-19年代の比較分析を試行したところ、本邦の水田は35年間で23%減少した可能性があることが示唆された。閲覧専用アプリ・分析アプリ、推定データ一式を公開しており、専門家以外のデータ利用環境も整備されている。水田生態系における生物調査データとの連携なども可能で、水田の減少・消失の追跡はもとより、農業政策・生物多様性保全に係る施策の立案にも貢献できる、と訴求している。

情報源 東京大学大学院農学生命科学研究科 研究成果
機関 東京大学大学院農学生命科学研究科
分野 地球環境
環境総合
キーワード 生物多様性 | Landsat | アプリケーション | フェノロジー | 衛星画像 | アルゴリズム | 水田生態系 | 水田分布図 | 光反射特性 | Google Earth Engine
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