三重大学は、ミナミメダカをキャンパス内の池で継続的に保全するプロジェクト(通称:三重大メダカ保全プロジェクト)を本格始動する。日本人に古くから親しまれているメダカ(広義)のうち、日本在来のメダカはキタノメダカ(Oryzias sakaizumii)とミナミメダカ(Oryzias latipes)の2種とされている。しかし、両種ともに、国内他地域から持ち込まれた個体や、観賞魚として品種改良された個体の放流などによって危機的な状況に瀕している(環境省RLで絶滅危惧II類)。同大学の構内にもミナミメダカが生息していたが、2009年頃から暫くの間はほとんど観察されなくなっていた。三重大メダカ保全プロジェクトは、2017年度に設立された水生生物飼育展示サークルaquri-Mの活動に端を発している。顧問を務める同大学生物資源学部教員の指導のもと、2019年にサークルのメンバー(現役学生)が構内でミナミメダカを再発見し、保全的移植の意義に関する理解が深まっていった。他方、大学・同窓会の協力によって庭園内の池が活用できることとなり、“より自然に近い環境での「系統保存」”に関する全てのリソースが整ったと思われたが、プロジェクトは大きな課題の解決を迫られることになる。使用許可が下りた池では漏水が生じており、冬季に水涸れが起きるため、継続的な利用に当たっては一定程度の防水工事が必要となる。そこで、2021年9月から「三重大学クラウドファンディング」において、プロジェクトのミッション等を示しつつ、寄付を募ったところ、当初の目標(防水工事)、さらには池の継続利用を担保するための目標(接続する水路の改修、防犯カメラの設置等)に係る資金調達に成功した。本プロジェクトは、生息域外保全プロジェクトにおけるクラウドファンディング活用の可能性を実証したものであり、動物園・植物園等に加え、「大学・教員・現役学生・同窓会の協同」の枠組みが実施主体になり得ることを提示している。本成果を“半永久的に系統保存を行う”仕組みと訴求しつつ、引き続き、メダカにとって住みやすい環境の整備を進めるとともに、トウカイヨシノボリ(三重県絶滅危惧種IA類)の系統保存も行いたい、と新たなステージへの熱意を語っている。
情報源 |
三重大学Rナビ
|
---|---|
機関 | 三重大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 絶滅危惧種 | 生息域外保全 | レッドリスト | 三重県 | 系統保存 | クラウドファンディング | ミナミメダカ | 三重大メダカ保全プロジェクト | 保全的移植 | カイヨシノボリ |
関連ニュース |