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 適応策の効果を織り込む!熱中症リスク評価の新コンセプト・新手法

発表日:2023.07.05


  国立環境研究所・気候変動適応センターは、“長期的な暑熱適応”を考慮した熱中症リスク予測手法を編み出した。気候変動下における熱中症罹患数・死亡数の増加が懸念されている。他方、生理学的な要因や適応策(行動変容、技術対策、規制など)の導入によって人類や社会全体の「暑熱耐性」が向上し、熱中症の深刻化に歯止めがかかるという見方もある。適応戦略の検討においては数十年スパンの長期的な影響評価が欠かせない。しかし、これまで、そうした観点を織り込んだ熱中症リスクの将来予測は行われていなかった。環境省と気象庁は、熱中症の予防行動を促す施策の一環として、2020年から「熱中症警戒アラート」の発表を行っている。アラートは日最高WBGT(湿球黒球温度)が33℃を超える可能性がある府県予報区等(全58地域)に発せられるが、同センターの研究チームは、「熱中症搬送率(=熱中症救急搬送人員数÷人口)が増加し始める日最高WBGT(以下「閾値」)」は都道府県や年齢層によって異なることを発見している(Oka, K. et al., 2023)。本研究では、先行研究の成果を発展させ、日最高WBGTと熱中症搬送率の関係は指数関数を用いて表すことができること、地域の暑さとWBGT閾値には正の相関があることを新たに見出し、閾値の上昇を暑熱耐性の向上に見立てる手法を体系化している。都道府県の暑さを複数の気候モデルやシナリオに基づいて設定し、閾値をシフトして今世紀中の年齢層別・熱中症搬送率を予測した結果、暑熱適応の考慮いかんにかかわらず熱中症搬送率は増加するものの、暑熱適応を考慮することで熱中症搬送率は低減するという結果が得られた。また、熱中症発生数(実数)を予測したところ、7~64歳における大幅な低減効果が認められたものの、65歳以上の高止まりが予想され、高齢者の熱中症対策の必要性が示唆された。現時点では暑熱耐性の向上に資する要因を個別に分析することは難しい。しかし、特定の施策(例:熱中症警戒アラート)の発現効果を明らかにできる可能性は高く、世界の国・地域に適用できる手法であるという(掲載誌:Environmental Research)。

情報源 国立環境研究所 報道発表
機関 国立環境研究所
分野 地球環境
健康・化学物質
キーワード 気候変動 | 適応策 | WBGT | 気候変動適応センター | 熱中症リスク | 熱中症警戒アラート | 救急搬送 | 暑熱耐性 | 湿球球温度 | 暑熱適応
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