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 「ナッジ」が自治体の予算編成プロセスを変える?!

発表日:2023.07.27


  横浜市立大学の黒木教授(国際商学部・大学院データサイエンス研究科)と大阪大学の佐々木特任准教授(感染症総合教育研究拠点・行動経済学ユニット)は、“ナッジを考慮したメッセージ”が地方自治体の予算編成担当者(以下「担当者」)の意思決定に影響することを実証した。「ナッジ(nudge)」は”そっと後押しする”という意味を持つ言葉。2000年代に、行動科学を活用して、人々を望ましい方向に導くための環境設計(選択アーキテクチャー)と定義された。その後、ナッジの理論的背景は行政機関や企業等の間で広く知られるようになった。近年では“経済的なインセンティブや行動の強制をせず、行動変容を促す”戦略・手法と理解されている。本邦でも、地球温暖化対策の一環として、ナッジの普及、社会実装に向けた取り組みが進められている(例:日本版ナッジ・ユニット連絡会議など)。他方、自治体財政に関する研究においては、組織の予算決定プロセスを中心とする研究成果が積み上げられているが、担当者の意思決定プロセスに焦点を当てた調査研究は十分に行われていなかった。また、予算案の分析や査定の段階で、長期的には有益な社会的成果をもたらすプロジェクトの予算化が見送られる傾向があるとの指摘もある。本研究は、ナッジの有効性や担当者が陥りやすい課題を踏まえ、デザインされている。先ず、A:(仮称)低炭素啓発事業の実績や成果目標などを表形式で整理したシナリオ(ベースライン情報)、B:「事業を進めなければCO2削減機会を失う」といった趣旨のメッセージ(損失フレーム・ナッジ)、C:「近隣自治体は先行実施し、成果を上げている」といた趣旨のメッセージ(社会比較・ナッジ)を盛り込んだ、4つのタイプの質問紙を準備した(Aのみ、A+B、A+C、情報無し)。そして、これらの質問紙を全国自治体の担当者に対してランダムに送付したところ、484名から回答が得られた。集計・分析を行った結果、総じて、損失フレーム・ナッジは過小評価されがちな事業の将来の成果を効果的に強調できることが分かり、社会比較・ナッジも同様に未来志向の予算編成を促進できる可能性が示唆された。本成果は、予算編成のフォーマットへの反映など、実務的な落とし込みが比較的容易である。ナッジの介入効果を定量的に測定する手法として、行政と市民の新たなコミュニケーション技法として、環境以外の政策分野における応用展開なども期待される(掲載誌:Public Budgeting and Finance)。

情報源 横浜市立大学 ニュース一覧
大阪大学 Research
機関 横浜市立大学 大阪大学
分野 環境総合
キーワード 環境政策 | 地方自治体 | 財政 | 行動科学 | ナッジ | 損失フレーム・ナッジ | 社会比較・ナッジ | nudge | 予算編成担当者 | 社会的成果
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