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 熱帯雨林の再成立年がわかるΔ14C年代測定法

発表日:2023.09.20


  高知大学教育研究部自然科学系農学部門・市栄教授らの国際共同チームは、熱帯雨林の大半を占めている「二次林」に的を絞った年代測定法を開発した。過去数十年の人為的な撹乱(商業伐採、農地開発など)等により、原生的な熱帯雨林の消滅・劣化が加速している。熱帯雨林は“生物多様性の宝庫”とも言われており、その多寡は地球全体の炭素固定能に少なからぬ影響をおよぼす。現存する熱帯雨林の6割以上(面積ベース)は、撹乱後に成立した二次林に置き換わりつつある。「熱帯二次林」の適切な保全・管理が喫緊の課題となっているが、基本的な情報不足は否めない状況にある。本研究は、熱帯雨林の多目的な活用に向けたプロジェクトの一環として、再生過程(植生改変)の理解を進めるためにデザインされたもの。マレーシア・サワラク州の広大な熱帯二次林の“正確な年代測定”に向けて、大きくは2つのステップからなる調査を実施した。先ず衛星画像を用いて最新の撹乱履歴を確認して調査エリアを6地域に絞り込み、各地域に29のプロット(20×20 m)を設置した。次に、各プロットで直径が最大の樹木を選定し、胸高のコアを採取して14C濃度を測定した。その結果、衛星画像による撹乱時期と14C濃度から推定した形成時期(樹齢)の間に有意な正の相関関係があることが判明した。また、前者は後者よりも5年程度早いという分かった(全プロット共通)。5年というズレは、土地利用の変化や土中に残った種子や植物体の生長(二次遷移への移行)に要する時間を示唆するものと考えられた。撹乱時期に5年を足し上げるだけで実際の森林形成(再生)の始期を特定することが可能となった。熱帯雨林地域は四季が明瞭ではなく、樹木は年輪を刻まない。また、雲の影響などによって衛星画像解析が制約されることが多い。本成果は、ともすれば困難な熱帯二次林の評価に新たな切り札を打ち出すものであり、熱帯雨林研究の前進、ひいてはSDGs目標15に貢献するものと言える(DOI:https://doi.org/10.1016/j.foreco.2023.121346)。

情報源 高知大学 インフォメーション
岡山大学 プレスリリース
総合地球環境学研究所 研究ニュース
機関 高知大学 国際農林水産業研究センター(国際農研) 岡山大学 総合地球環境学研究所 マレーシア国サラワク州森林局
分野 自然環境
キーワード 熱帯雨林 | 衛星画像 | SDGs | 二次林 | 年代測定法 | 炭素固定能 | 熱帯二次林 | 14C濃度 | 二次遷移 | 熱帯雨林研究
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