高知大学を中心とする国際共同研究グループは、熱帯雨林を構成する樹木(以下「熱帯樹木」)の成長率を高精度に特定し、生理応答なども解析できる技術を確立した。樹木の長期的な成長データは、過去の環境変動を紐解く重要な手がかりとなる。温帯樹木の成長履歴は年輪年代学的な手法を用いて調査することができる。しかし、熱帯樹木の多くは年輪が不明瞭であるため、継続的な毎木調査(周囲長の計測等)が唯一の調査手法と考えられてきた。同研究グループは、過去50年間にわたる熱帯樹木の成長量を正確に読み取る方法の確立するために、1950~1960年代に放出された核実験起源14Cの経年変化(Δ14C)を利用する画期的な評価技術を考案した。14C濃度から算定した木部の「形成年」は、過去の周囲長データに基づく算定値と正の相関関係があり、木部の「成長率」についても有意な相関関係が認められた。精度が裏付けられたことを踏まえ、さらに気候変動に対する熱帯樹木の応答解析を試行している。マレーシアの森林保護区で生育する12種・23本の熱帯樹木を対象として、林冠近くの木部の炭素安定同位体比(Δ14C、δ13C)を調べた結果、どちらの値も樹種や個体に関係なく1969 年以降はほとんど変化していない(葉内の細胞間隙のCO2濃度を一定に保っている)ことが明らかになった。過去50年間、同地では大気の乾燥化の進行が報告されていることから、その間、熱帯樹木は気孔を閉じ気味にして、「水利用効率」を著しく増加させる環境適応戦略をとっていたことが示唆された。本研究の開発手法は、非季節性熱帯雨林の気候変動影響評価や、炭素貯蔵庫としての重要性が注目されている熱帯雨林の維持管理に広く活用できるという(掲載誌: Methods in Ecology and Evolution、DOI:10.1111/2041-210X.13823)。
情報源 |
高知大学 インフォメーション
(国研) 国際農林水産業研究センター 研究プログラム(現地の動き) |
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機関 | 高知大学 (国研)国際農林水産業研究センター |
分野 |
地球環境 自然環境 |
キーワード | 気候変動 | マレーシア | 熱帯雨林 | 熱帯樹木 | 炭素安定同位体 | 年輪年代学 | 核実験起源14C | Δ14C | 水利用効率 | 非季節性熱帯雨林 |
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