環境省は、国連の「公海等生物多様性協定(BBNJ協定)」に基づき、公海および深海底における日本の活動に対する環境影響評価(EIA)の実施手続きを定めた「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」を公表した。これは、2023年6月に採択されたBBNJ協定の第4部(第27条~第39条)に準拠し、協定発効後に日本が国内で適切に対応するための措置である。
BBNJ協定は、いずれの国の管轄にも属さない海域における生物多様性の保全と持続可能な利用を目的とし、環境影響評価の実施を義務付けている。今回のガイドラインは、協定の発効前に国内制度を整備するものであり、対象となる活動の選別、評価手続、報告、監視、再評価までの一連の流れを詳細に規定している。
ガイドラインでは、活動が海洋環境に与える影響が軽微でないと判断された場合、活動者は影響評価の範囲を定め、科学的知見や地域社会の伝統的知識を活用して評価を実施する必要がある。評価結果は「クリアリングハウスメカニズム」と呼ばれる情報共有プラットフォームに登録され、国際的な透明性が確保される。また、評価報告書に対しては、協定締約国や科学技術機関からの意見提出が可能であり、それらの意見を踏まえて報告書の修正や活動の見直しが求められる。さらに、活動実施後に予見されなかった重大な環境影響が発生した場合には、活動の停止や再評価が義務付けられる。
このガイドラインは、協定が日本に対して効力を生じた日から適用される予定であり、今後の国際的な科学的知見や協定締約国会議の決定に応じて見直しが行われることが明記されている。なお、2025年5月には本ガイドライン案に対するパブリックコメントが実施され、5件の意見が寄せられた。