環境省と欧州委員会(EC)環境総局は6月23日に第20回日EU環境高級事務レベル会合を開催した。会合はブリュッセルにてEC環境総局が主催し、松澤裕・地球環境審議官とパトリック・チャイルド・環境総局長代理が開催を主導した。両者は、日EUグリーン・アライアンスの戦略的パートナーシップの強化と、気候変動、生物多様性、汚染といった喫緊の環境課題への対応について意見を交わしている。
主要な議題の一つは、生物多様性条約(CBD)第17回締約国会議(COP17)に向けた準備であり、日本側は昆明・モントリオール枠組の初回レビューに関する最新情報を提供した。加えて、絶滅危惧種の国際取引に関するCITES条約や森林減少対策についても議論が行われた。
循環経済分野では、日本の政策的コミットメントとEUのELV(使用済み自動車)規則案、PPWR(包装及び包装廃棄物規則)に関する進捗が共有され、両者は自動車の循環性向上や技術的障壁への対応について意見交換した。また、プラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書の交渉を早期に妥結させることへの共同コミットメントが再確認された。汚染対策では、日本側が大気汚染に関する政策の進展を紹介し、EU側は電子廃棄物や廃棄物輸送規則の明確化を通じた環境保護の推進を説明した。 今後の協力に関しては、EUが提唱する「新しいヨーロッパ・バウハウス(New European Bauhaus)」イニシアチブへの日本の参画が呼びかけられた。──同イニシアチブは、欧州グリーンディールの理念を具現化する政策・資金支援枠組みであり、持続可能性・包摂性・美しさを兼ね備えた生活空間の創出を目指すものである。なお「バウハウス(Bauhaus)」とは、ドイツ語で「建築の家」を意味し、1919年に設立された芸術・建築学校に由来する。機能美と合理性を重視したモダンデザインの源流として知られ、現代のNEBはその理念を環境政策や都市設計に応用している。──この理念を具体化するため、EUは2025年から2027年にかけて「NEBファシリティ(NEB Facility)」を通じた研究・イノベーション支援を展開しており、地域社会の再生、循環型都市設計、新たな資金モデルの構築などを重点分野としている。
両者は今回、環境政策の相互理解とイノベーション促進には定期的な技術レベルでの交流が不可欠であると認識し、2025年から2026年にかけて協力を継続する方針を確認した。次のステップとして、欧州委員会環境総局は2025年9月に大阪・関西万博へ参加し、循環経済やグリーン都市、New European Bauhausなどのテーマで意見交換を継続する予定である。ジェシカ・ロズウォール欧州委員の来日も予定されており、日本側はこれを歓迎した。次回の高級事務レベル会合は2026年に日本で開催される予定である。