環境省は、「環境課題の統合的取組と情報開示に係る手引き」を公表した。この手引きは、気候変動や自然資本、循環経済など多岐にわたる環境課題に対し、企業が個別対応ではなく、相互関係性を踏まえた統合的なアプローチを推進することを目的としている。
近年、TCFD(気候関連財務情報開示)やTNFD(自然関連財務情報開示)などの国際的な開示フレームワークが整備され、企業に対する情報開示の要請が高まっている。環境省はこれらの枠組みを中心に、ISSBやSSBJなどの基準も考慮し、将来的な法定開示への対応も視野に入れている。
【理論編】では、環境課題間の相互関係を理解し、統合的なリスク管理・ガバナンス体制を構築することで、企業のレジリエンス向上や戦略的意思決定の質の向上が期待されると指摘している。気候変動と自然資本の関係性を考慮したシナリオ分析や、複数課題に対する対応策のトレードオフ回避などを例示している。
【実践編】では、伊藤園、キリン、積水化学、大成建設などの企業事例を紹介。これらの企業はTCFDとTNFDの共通項目を統合的に管理・開示し、環境課題への対応を深化させている。特に、積水化学は可燃ごみをエタノールに変換する技術を開発し、気候変動と循環経済の双方に貢献する取り組みを実施している。また、「環境デュー・ディリジェンス(環境DD)」についても言及されており、EUのCSDDDなどの制度を参考に、企業がバリューチェーン全体で環境リスクを評価・開示することの重要性が強調されている。
環境省は、統合的な取組と情報開示が企業価値向上に寄与する可能性があるとし、今後の実践と検証を通じて、より効果的な環境経営の推進を目指している。──企業向けの資料ではあるが、私たちの暮らしや未来の環境にも関係する内容となっている。