東京大学大学院工学系研究科、科学技術振興機構(JST)、理化学研究所の研究グループは、"ヘチマスポンジ"に似た超軽量かつ強靭な多孔質ポリマー超薄膜の開発に成功したと発表した。本研究は、従来「軽量な多孔質ポリマーは脆弱である」とされてきた常識を覆す成果である(掲載誌:Science)。
ヘチマスポンジとは、植物のヘチマを乾燥させて作られる天然の繊維状構造体で、かつては日本の家庭で体洗い用の道具として広く使われていた。乾燥すると硬くなる一方、湿らせると柔らかくなるという特性を持ち、自然由来の多孔質素材として知られている。
今回開発された超薄膜は、レゾルシノールとホルムアルデヒドの混合物を純水に溶かし、電極を挿入して2分間電圧を印加するだけで形成される。厚さはわずか70nmで、欠陥のない大面積自立膜が得られる。この膜はヘチマスポンジに似た網目構造を持ち、水溶液のpHに応じて物質透過のオン・オフを自動制御できるスマート分離膜として機能する。さらに、抗菌・抗ウイルス性を有し、感染防止フィルターへの応用も期待される。――乾燥状態での密度は通常のポリマーの半分程度であるにもかかわらず、ヤング率は約11GPaに達し、従来の多孔質ポリマーの約3〜4倍の硬さを示す。また、蒸し焼き処理により導電性炭素薄膜へと変換可能であり、電気二重層キャパシタなどのエネルギーデバイスへの応用が見込まれる。
本手法は、電気化学的手法と水というグリーン溶媒を組み合わせた一段階合成であり、ロール・トゥ・ロール方式による大量生産にも適している。省資源・環境低負荷の観点からも、持続可能な未来に資する革新的技術と位置づけられる。なお、本研究はJST「さきがけ」事業、日本学術振興会科研費の支援を受けて実施された。発表者は、持続可能な材料開発の新たな道を拓く成果であると述べている。
情報源 |
東京大学大学院工学系研究科 プレスリリース
JST プレスリリース 理化学研究所 研究成果(プレスリリース) |
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機関 | 東京大学 科学技術振興機構(JST) 理化学研究所 |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 多孔質ポリマー | 超薄膜 | ヘチマ構造 | 電気化学的手法 | 架橋重合反応 | ヤング率 | スマート分離膜 | 導電性炭素薄膜 | ロール・トゥ・ロール方式 | グリーン合成 |
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