文部科学省は7月8日より「次世代HPC・AI開発支援拠点形成事業」の公募を開始した。本事業は、スーパーコンピュータ「京」および「富岳」を中核とするHPCI(革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ)の成果を継承・発展させ、ポスト「富岳」時代に向けた"新たな計算科学・AI研究の基盤"を整備することを目的とする。
HPC(High Performance Computing)は、大規模な計算処理を高速に行うための技術基盤であり、科学技術計算やAIの学習・推論に不可欠なインフラである。近年では、「AI for Science(AIを活用した科学研究)」や自動実験、リアルタイムデータ解析など、従来のシミュレーションを超えた応用に貢献している。
本事業では、次世代のフラッグシップシステムに導入予定の「加速部」(GPU等)への対応を含むアプリケーション開発支援を行う拠点を形成する。拠点は、大学や国立研究開発法人などの代表機関・中核機関・協力機関が連携して構成され、CPU・GPUベンダーや理化学研究所とも協力しながら、技術支援、人材育成、研究開発、普及啓発活動を推進する。――具体的には、①拠点運営と連携体制の構築、②分野横断的な開発者コミュニティの形成、③加速部対応に関する技術支援プログラムの実施、④国内ユーザへの普及啓発活動の4点を柱とする。特に、既存・新規アプリケーションの加速部対応に向けた教材整備やハンズオン講習、オンライン学習プラットフォームの提供など、実践的な支援が重視されている。
事業期間は2025年度から2029年度までの5年間を予定し、初年度の予算上限は2億8,000万円。公募説明会は7月15日にオンラインで開催される。申請締切は8月4日で、採択1件を基本とするが、状況に応じて『複数拠点の選定』も可能とされている。
文部科学省は、ポスト「富岳」時代の計算科学とAI研究の基盤強化を通じて、我が国の科学技術力の持続的発展を図る構えである。