大阪公立大学大学院獣医学研究科の松林誠教授らの研究グループは、絶滅危惧種であるニホンライチョウに寄生するアイメリア原虫の感染メカニズムを解明した。――アイメリア原虫は鳥類や草食動物の消化管に寄生し、下痢や削痩などを引き起こす病原体であり、通常は宿主の体外に排出された後、低温環境下で死滅することが知られている。
同研究グループは、2021年に日本アルプスから移送されたニホンライチョウの母鳥と雛2家族を対象に、2年間にわたり感染状況を追跡調査した。その結果、冬季の氷点下環境下でも原虫が完全に消失せず、軽度な感染が継続していることを確認。さらに、繁殖期に入ると雌親の体内で原虫が再増殖し、糞便を介して雛へと効率的に感染が伝播することが明らかとなった。この現象は雄や繁殖を行わなかった個体では見られず、雌親に特有の生理的変化が関与している可能性が示唆される。
これらの知見は、アイメリア原虫が単なる病原体ではなく、ニホンライチョウの生態系において共生的な役割を果たしている可能性を示しており、人工繁殖や野生復帰を含む保全活動に新たな視点を提供するものである。
研究者は、今後の保全活動においては、人工繁殖個体に対して原虫の付与を検討する必要があるとし、家畜への応用可能性にも言及している(掲載誌:International Journal for Parasitology: Parasites and Wildlife)。
情報源 |
大阪公立大学 最新の研究成果
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機関 | 大阪公立大学 |
分野 |
自然環境 |
キーワード | 絶滅危惧種 | 野生復帰 | ニホンライチョウ | 寄生虫感染 | 人工繁殖 | アイメリア原虫 | 消化管寄生 | 再増殖 | 冬季感染 |
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