産業技術総合研究所(産総研)と名古屋大学宇宙地球環境研究所は、水銀を使用しない新たな水試料殺菌手法を共同開発した。本手法は、環境負荷の少ない塩化ベンザルコニウムによる殺菌処理と、微生物の芽胞を物理的に除去するろ過処理を組み合わせることで、従来の水銀殺菌法の弱点を克服するものである。
溶存無機炭素(DIC)は、海洋に吸収された二酸化炭素の形態の一つであり、地球環境の変化を把握するための重要な指標である。DICの濃度や炭素同位体(特に放射性炭素:^14C)の分析には、微生物活動による成分変化を防ぐ殺菌処理が不可欠であり、国際的には水銀が用いられてきた。しかし、水銀は高い殺菌力を持つ一方で、生物毒性と環境負荷が極めて高く、水俣条約の発効以降、使用制限が進んでいる。
今回の研究では、海水・地下水試料に対して4種類の処理(無処理、塩化ベンザルコニウムのみ、ろ過のみ、ろ過+塩化ベンザルコニウム)を施し、長期保管中のDICの^14C濃度変化をモニタリングした。その結果、ろ過と塩化ベンザルコニウムを組み合わせた処理において、微生物活動によるDICの変化がほぼ検出されず、殺菌効果が持続することが確認された。
この成果は、将来的な水銀使用制限を見据えた国際的な水試料処理手法の改訂に貢献する可能性がある(掲載誌:Ocean Science)。
情報源 |
産総研 ニュース(研究成果)
名古屋大学 研究成果発信サイト |
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機関 | 産業技術総合研究所(産総研) 名古屋大学 |
分野 |
地球環境 健康・化学物質 水・土壌環境 |
キーワード | 炭素同位体 | 水俣条約 | 放射性炭素 | 溶存無機炭素 | 水試料殺菌 | 塩化ベンザルコニウム | ろ過処理 | 水銀代替 | 地球環境観測 | 国際共通手法 |
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