三菱倉庫は、「系統用蓄電池事業」を新規事業として立ち上げると発表した。同社は物流と不動産を主軸とする企業であるが、電力市場関連に本格的に足を踏み入れるのは初めて。神奈川県横浜市と埼玉県本庄市に「港北電力倉庫(仮称)」「児玉電力倉庫(仮称)」を設置し、合計約350MWhの蓄電容量を確保する計画だ。
この事業の特徴は、従来の「倉庫」概念を大きく拡張している点にある。三菱倉庫はこれまで、モノを保管・流通させる物流施設を中心に事業を展開してきたが、今回の「電力倉庫」は、電力という目に見えない資源を蓄積・放出する空間として設計されている。蓄電池を通じて電力市場での取引を行い、再生可能エネルギーの変動を平準化することで、電力系統の安定化に貢献するという。
港北電力倉庫では約85MWの定格出力と約340MWhの定格容量を、児玉電力倉庫では約2MW・約8MWhを予定しており、両施設を合わせると一般家庭約4万世帯の1日分の電力を賄える規模となる。事業期間は各施設20年間を見込み、蓄電池の耐用年数に合わせた長期的な収益モデルを構築する。三菱倉庫は、データセンター対応ビルなどで培った大容量電力設備の運用ノウハウを活かし、施設の保守・管理はグループ会社が担う。これにより、物流施設の運営で蓄積された技術力を電力インフラに転用する形となる。
今回の参入は、単なる事業多角化ではなく、倉庫という空間の意味を再定義する試みでもある。モノの保管からエネルギーの蓄積へ、空間の機能が物理的から経済的・社会的へとシフトしている。三菱倉庫は「電力倉庫」という新たな社会インフラを通じて、サステナブルな未来に向けた挑戦を加速させる構えだ。
情報源 |
三菱倉庫 ニュースリリース
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機関 | 三菱倉庫(株) |
分野 |
環境総合 |
キーワード | 再生可能エネルギー | 電力系統 | 社会インフラ | 電力市場 | 需給調整 | 系統用蓄電池 | 容量市場 | 原位置蓄電 | サステナブル経営 | 不動産活用 |
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