資源エネルギー庁は8月12日、太陽光発電におけるFIP制度への移行に際し、蓄電池を併設する場合の申請手続を迅速化する新たな運用方針を発表した。これは、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた制度整備の一環であり、FIP制度の活用促進、蓄電池導入の加速、電子申請の利便性向上という3つの施策を同時に実施するものである。
FIP制度(Feed-in Premium)は、再エネ電気の市場価格にプレミアムを上乗せすることで、発電事業者の収益を確保しつつ、電力市場との統合を促進する制度である。従来のFIT制度(固定価格買取制度)とは異なり、発電事業者は市場価格を意識した発電を求められるため、蓄電池の活用による需給調整が重要な役割を果たす。
今回の運用変更では、FIP移行認定申請と同時に蓄電池設置に係る変更認定申請書類(単線結線図、配置図、仕様書など)を電子申請システムに添付することで、事前確認が並行して行われる。これにより、認定審査と蓄電池設置の確認が同時進行となり、手続の迅速化が可能となる。なお、発電設備の設置場所変更など、蓄電池以外の変更を含む場合は対象外となる。
また、蓄電池設置に係る変更認定申請は、FIP認定後でも可能だが、その場合は従前のFIT認定の変更として扱われ、調達価格が変更される可能性がある。申請期限日については、FIP移行認定申請は随時可能だが、変更認定申請は年度ごとの申請期限日が適用される。
FIP制度は2022年に開始され、再エネの自立化と電力市場への統合を目的として導入された。制度の詳細設計では、FIT制度からの移行を円滑に進めるため、バランシングコスト(需給調整に伴う費用)への配慮や、プレミアムの設定方法が工夫されている。特に、卸電力市場と非化石価値取引市場の価格に連動した「参照価格」と、事業者の収益確保を支援する「基準価格」の差額がプレミアムとして支給される仕組みが採用されている。
資源エネルギー庁は、FIP制度の導入により、再エネ事業者が市場価格を意識した発電を行うよう促すとともに、蓄電池の活用によって収益性を高めることを期待している。今回の運用変更は、こうした制度設計の背景を踏まえたものであり、再エネ導入の加速と制度の実効性向上に資する措置として位置づけられる。――本施策の関連情報は資源エネルギー庁の公式サイトにて公開されており、申請者は電子申請の記載要領や添付書類の確認を徹底する必要がある。