東北大学大学院環境科学研究科の研究グループは、ドイツ地球科学研究センター(GFZ)およびダルムシュタット工科大学との国際共同研究において、植物由来の生分解性キレート剤GLDAを用いた岩盤改良実験を実施し、地熱条件下の花崗岩の透水性を最大数十倍に改善することに成功した。GLDAはグルタミン酸を原料とする環境負荷の低い薬剤であり、150ºC・50MPaという深部条件でも安定した効果を示した(掲載誌:Geoenergy Science and Engineering)。
地熱発電は、昼夜を問わず安定供給が可能な再生可能エネルギーとして国際的に注目されているが、発電に必要な水の通り道が少ない中温花崗岩層では利用が難しいとされてきた。従来の水圧破砕には誘発地震のリスクがあり、酸処理には環境負荷や効果の限界がある。こうした課題に対し、環境にやさしく安定的に透水性を改善できる新技術の開発が求められていた。
本研究では、ドイツ・ライン地溝帯から採取した花崗岩試料にGLDA水溶液を注入し、150〜200ºC・10〜50MPaという地下深部に相当する条件下で透水性の変化を評価した。わずか2時間の薬剤処理で透水性は数倍〜数十倍に改善し、特に150ºC・50MPaの厳しい条件下でも効果が維持された。X線CT観察により、鉄を含む鉱物が優先的に溶解し、骨格鉱物が残存することで安定した水みちが形成されることが確認された。また、pH調整により薬剤効果を強化できることも示された。
研究グループは、GLDAが地下環境に残留しにくく、安全性が高い点に加え、選択的な鉱物溶解によって岩盤の骨格を保ちつつ透水性を改善できる点に意義があると述べている。今回の成果は、環境負荷の低い薬剤処理技術として、次世代型地熱発電(EGS)への応用可能性を示すものであり、今後はフィールド実証や商用化に向けた取り組みが期待される。なお、本研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業の支援を受けて実施された。